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2007年5月30日 (水)

カンヌ映画祭考

僕が映画に興味を持ったのは四国の高松から関西の大学に入学したばかりのころだった。大学の演劇部で一緒になった伊良子序(いらこ・はじめ)君が「男と女」(クロード・ルルーシュ監督)や「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドミー監督)の魅力を熱っぽく僕に語ってくれたのがきっかけだ。

僕たちは一緒に映画をつくろうと、資金作りなどの活動を始めたが途中で挫折。しかし、その後、僕とは別の新聞社に入った伊良子君は初志貫徹、映画評論家になり、神戸100年映画祭の総合プロデューサーとしても知られる。本当に彼は映画が好きだったんだな、とつくづく思う。

僕は映画とは無縁の生活だが、「カンヌ」「ベネチア」「ベルリン」という世界の三大国際映画祭は毎年の関心事だ。

このほど開かれた今年のカンヌ映画祭で「グランプリ」に輝いたのは河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」だった。最高賞「パルムドール」に選出されたリスティアン・ムンジウ監督のルーマニア映画「4カ月、3週間と2日」に次ぐ栄誉だ。

河瀬さんは大阪写真専門学校映画科を1989年に卒業、「萌の朱雀」で1997年カンヌ国際映画祭カメラド-ル(新人監督賞)を史上最年少受賞した。その後も数々の国際映画祭に出品し、世界で最も注目される日本人監督である。

「殯の森」は妻と死別後、認知症になった老人と、子供を亡くしたばかりの女性が深い悲しみを共有しながら次第に心を通わせていくストーリー。
老人を演じる「うだしげき」さんはズブの素人であり、この作品にとくに有名な俳優は出演していない。しかし、カンヌの審査員にとっては、映画の質そのものが大切なのだ。

河瀬監督の人間へのまなざしが、どのように表現されているのか僕は早くこの作品を見てみたい。

これから配給会社からのオファーが来るかどうか知らないが、現時点で公開が決まっている映画館としては6月23日から渋谷シネマ・アンジェリカ 、7月7日から大阪九条シネ・ヌーヴォでのロードショーである。

僕の地元大阪の、九条シネ・ヌーヴォは76席の映画館だ。そのホームページによると、 「洋画・邦画の多様な作品、とりわけアート系の新作や、実験作、フィルムアーカイブ作品も取り上げ、関西のシネマクラブの拠点となりうる意欲的な運営を進めたい」という。
ちなみに現在の上映作品は「黒い眼のオペラ」(ツァイ・ミンリャン監督)「パラダイス・ナウ」(ハニ・アブ・アサド監督)。

梅田や心斎橋ではなく、九条という下町に、こういう映画館ががんばっているということ、すごいことだと思う。

さて、カンヌ映画祭だが、最近の「パルムドール」作品は?といわれても、すぐには思い出せないのではないだろうか。

昨年が「麦の穂をゆらす風」(ケン・ローチ)、一昨年が「ある子供」(ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ)。その前の年の「華氏911」は話題になったマイケル・ムーア作品だから知っている人は多いだろう。 

それにしても、カンヌ受賞作品は日本ではあまり話題にならない。ハリウッドを中心とした娯楽大作 、とりわけアカデミー賞受賞作品が注目され、巨額の宣伝費を投入して観客を大量に呼び込む。大手の配給会社やシネコンはグローバルな経済の中で映画という商品を考えざるを得ない。売れる商品かどうかが唯一の価値観なのだ。

今の日本において、お金に関係なく、文化を育てていこうという「ゆとり」はありそうもない。世界の大競争にすべてが飲み込まれてしまっているかに見える。

だからこそ、シネ・ヌーヴォや伊良子君の神戸100年映画祭など、志ある映画人たちの活動が、映画の質を、そして観客の見る目とセンスを、「アメリカ的価値観」の一極化から救ってくれることを、これからも期待していきたい。

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