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2007年5月22日 (火)

ウルフォウィッツ世銀の功罪

世界銀行総裁、ウルフォウィッツ氏はまことにタフな男である。交際相手の女性職員を厚遇した問題で辞任することになったが、何事もなかったかのように報道陣に笑顔を振りまいている。

ウルフォウィッツ氏はサダム・フセインと大量破壊兵器の脅威を煽り立て、現在のイラクの混乱を招いた張本人だ。米国が脅威と感じれば攻撃を受けなくとも先制攻撃する、という「ブッシュ・ドクトリン」。そのモトになった指針を彼が作成した。 

2003年にイラク戦争が始まった当時、国防副長官として戦争を指揮した。そして、なんと2005年には、世界銀行総裁に就任したのだから恐ろしい変わり身の早さだ。

世界銀行は発展途上国の工業開発を目的とした融資を、主な業務としている。かつて日本も戦後の復興期に融資を受けた。新幹線や東名高速道路もそうだ。ありがたい存在なのだ。

だからウルフォウィッツ氏が世銀総裁に就任したとき、「羊の衣をかぶったオオカミ」などと批判されたのもうなずける。
戦争の首謀者、つまり破壊者が復興の資金を受け持つ、という矛盾に満ちた人事がアメリカでは当然のことのように行われたことになる。

しかし、それはこれまでアメリカが自国に富を蓄積してきた方法論を考えれば、不思議なことでもなんでもない。ずっとこの国は同じやり方で破壊と援助と収奪を繰り返してきたのだ。日本はその典型的な例である。今はアメリカにとって、日本という豊穣な田畑の収穫期である。

ならば、世界銀行を詳しく見てみよう。まず、貧しい国がここからお金を借りるには、「構造調整プログラム」という条件を受け入れなければならない。それは▽ 外貨を稼ぐため自然資源を伐採し農業政策を見直す▽国の基幹産業を民営化する▽貿易や投資の規制を撤廃する▽公共投資や医療・教育・福祉の予算を削減する―などだ。 

途上国側から見れば、民営化、構造改革、規制撤廃などにより、経済発展の恩恵を受ける一方で、 自然環境が破壊され、小規模農業が駆逐され、多国籍企業に買収されていくというおなじみのパターンをたどることが多い。

アメリカにすれば、構造調整プログラムを実行させたうえで民営企業を育て、米国式の市場経済や金融システムを導入して、投資や買収でガッポリ稼ぐという、まことにみごとな手際で富の移転をやってのける。わが日本は国防までお世話になって、「アメリカ様」に足を向けて寝られないものだから、「全て仰せの通り」。アメリカ企業が大いに日本企業を買収しやすいような体制まで整えた。

そんなわけで、途上国を金融で支配する世界銀行の総裁は「人事慣行に基づき」という理由で米国人から選出されることになっている。世銀を米国人がコントロールできなくてはこれまでの富国方程式は通用しないからだ。

 「開発途上国の問題を扱う機関の最高ポストについて、先進国アメリカが支配権を持っているというのは問題である。世界には適任者がたくさんおり、選任にあたっては競争と実力の原則が導入されるべきだ。そうすれば帝国主義の手先と見られることはなくなるだろう」

 欧州や途上国のメディアから、そのように世銀の改革を求める声は一層強くなっている。 

 ブッシュ大統領がが後任総裁に誰を選ぶのか、興味というより不安である。自爆テロ、飢え、貧困、虐げられ火傷を負ったアフガンの女性・・・破壊された国々のあまりに悲惨な現状を見るにつけ、せめて良心を感じさせる人選を求めたい。

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