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2007年5月20日 (日)

ロシア問題、EUの憂鬱

 ロシアのガルリ・カスパロフ氏といえば、チェスの世界チャンピオンだった。1997年にはコンピューターと対戦して話題になった人物だ。2005年にチェス界から引退、政治家となり、いまや野党連合体「もう1つのロシア」のリーダーとして活動している。
 

 プーチン政権を「民主主義を弾圧する警察国家」と批判する彼は、今年4月14日、反プーチンデモに参加して身柄を拘束された。

 そして、5月18日、ロシア・サマラ州トリヤッチに向かう途中、モスクワ空港で警察にパスポートとチケットを没収され、5時間にわたって引き止められた。

 実は、その日トリヤッチでは貿易、安全保障、エネルギーなどを主要議題にEUとロシアの首脳会議が開催された。カスパロフ氏はそれに合わせて計画されたデモに向かおうとしていたのだ。

 首脳会議後の記者会見に出席した、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相と、バローゾ欧州委員長(元ポルトガル首相)。

 ヘラルド・トリビューン(電子版)の一面に掲載されたプーチン、メルケル両首脳は深刻な表情で額を寄せ合っている。200人もの報道陣がが詰め掛けた会場は、とげとげしい雰囲気に包まれたという。

 記者会見の間、質問が相次いだのはロシアの人権弾圧、とりわけカスパロフ氏の一件に関連する問題であったらしい。

 「反対勢力は法律を守るべきだ」。プーチンは人権問題で次々と質問を浴び、明らかに苛立っていた。

 メルケル首相は「率直に申し上げてサマラでデモをしたいという人にはできるようにすべきだというのが私の願いです」「人は自らの意見を表現する機会を与えられるべきです」とプーチン政権を批判した。

 ドイツの記者から「どうしてデモを恐れるのか」と聞かれたとき、プーチンは「法律に従ってデモをやろうという人たちはその機会が与えられるべきだ。しかし、一部の人々は暴力的になるから法的措置で対処することになる」と言い返した。

 メルケル首相は、プーチンが1985年から5年間、KGB職員として駐在していた東独出身である。メルケルはロシア語が堪能、プーチンはドイツ語が達者でドイツ銀行やドレスナー銀行とのパイプがある。資源産業をオリガルヒ(新興財閥)から奪い、次々と国有化する過程でプーチンはドイツの金融界に支援を受けていたといわれている。

 そういう独露関係はともかく、これはEUとロシアの会議である。会見のもう一人の主役、バローゾ欧州委員長は次のように訴えた。
「我々は民主主義、報道の自由、集会の自由、デモの自由の重要性を強調する」「分裂ではなく団結に価値があると確信している。それは全てのヨーロッパ諸国にとって重要なことだ。そして、ロシアはヨーロッパの国である。したがってこの原則と価値を尊重してほしい」
彼の立場からは当然の発言だろう。

 それに対しプーチン大統領は「われわれはお互いを必要としている。EUはロシアの最も大切な貿易のパートナーである。ロシアはEUとの誠実なな対話を受け容れる。しかし、われわれはパートナーと同じプロフェショナルな方法で自国の利益を守らなければならない」ときっぱり言った。

 来年3月に2期目を終えて大統領から退くプーチンだが、自らに集中した強大な権力を他に譲るつもりはないだろう。院政の準備を着々と進めているはずだ。

 豊富な資源を切り札に経済復興を成し遂げ、「強いロシア」の復活をめざすプーチンへの国民の好感度は高い。その高い支持ゆえに傲慢になり、築き上げたカリスマの地位を言論や人権の弾圧をしてまでも守ろうとするのだとすれば、ロシアは本当に危険な国になりつつあるといえる。

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