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2007年5月25日 (金)

名誉殺人・悲劇の女性たち

男が女を虐待する心理について考えている。愛する存在から裏切られたと感じたとき、逆上する気持ちは分からぬわけではない。燃え盛る情念は他人の理性の及ばぬ世界だろう。もっとも、些細なことに腹を立て、暴力に訴え、挙句の果てに殺してしまう、となると話は別である。

ただ、事実として男女の愛情のもつれや三角関係、ストーカーの殺人事件というのは古今東西、限りなく繰り返されてきた。そして暴力を弱いものに向けることに快感を覚えるタイプの人間がいることも確かである。

しかし、最近ウェブ上に公開された女性殺人の映像は僕には考えられない衝撃的なシーンだった。http://www.cnn.com/video/player/player.html?url=/video/world/2007/05/18/todd.stoning.death.cnn

路上に横たわった少女に、何人もの男が足で蹴りつけ、石を投げつけているのだ。付近には警察官や野次馬が集まっているが誰一人助けようとせず、彼女自身も助けを求めずにされるがままに耐えている。そして、彼女は息絶えた。

イラク北部に住むクルド系の17歳の娘で、ムスリム(イスラム教徒)の男性と恋に落ち、駆け落ちした。そのことを家族や親族の名誉を傷つける行為としてとがめられた。彼女に暴力をふるって死に至らしめたのは誰あろう、彼女の兄弟であり親族であった。

「名誉殺人」というのだそうである。僕にとってははじめて聞く言葉であり、衝撃が体中に走った。

オーマイニュース英語版でスミタ・プーデルという人がこのようにコメントしている。

国連によると、「名誉殺人」は年間五千件も起きており、その範囲はインドの農村地帯から北米までのイスラム教徒、シーク教徒、キリスト教徒の間に広がっているという。このうちメディアでよく報じられるのはイスラム教徒の事件だ。こうした殺人者たちは、殺害を「女性の行為により一族が恥をかかせられ、その名誉が傷つけられた。汚名をそそぐためには女性の殺害が不可欠だ」と正当化している。一族を守るとする男たちは、”堕落行為”を犯した女性の殺害を当然のこととして受けとめている。「名誉殺人」が登場し始めたのは、女性たちそしてその性的役割が一族の財産とされてからだ。

AFPのレポートによると、国連はイラク国内の人権状況について報告し、クルド系イラク人の間で「名誉殺害」と呼ばれる行為が急速に広まっているとして深刻な懸念を表明しているという。

実はこの映像の数日前に、CNNテレビでアフガニスタンの19歳の女性が病院のベッドの上でインタビューを受けている姿を見た。彼女は腹部に大やけどを負い、涙のにじむ悲しげな目を向けて事情を語った。アフガンでは強制結婚ということがいまだに行われていて、彼女も同じ運命に翻弄された。夫から虐待され、苦しみぬいた挙句、彼女は自らの体に油をかけ、火をつけたという。

戦火と殺戮と貧困の中で荒れ果てた人間の心を、僕らが測ることはまことに不遜なことではある。だから「男たちの恐怖、不満、怒りのはけ口を、弱いものへの暴力に向けないで欲しい」と平和な世界にいる僕が言うのは気が引ける。そして、こうした虐待される女性たちに対して僕に何ができるかというと、無力感しかない。

だけど、名誉より、金より、その他の何物より人命が大切であるという、人間社会の原理原則を守るのが人の務めである。これだけはやはり言っておかなければならない。

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