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2007年6月 9日 (土)

ブッシュ氏「ウイグルの母」と対面

Bushrebiya400 「中央アジアの草原にて」というボロディン作曲の交響詩を中学か高校のころ、音楽の授業で聴いた。見渡す限り続く平原をこえてロシアの歌が流れ、遠くから馬と駱駝に乗ったアジアの隊商がオリエンタルな響きとともに近づいてくる。シルクロードの、のどかな風の音さえ聞こえるようだ。

その、中央アジアはトルキスタンともいわれる地域である。
パミール高原を境として西トルキスタンと、東トルキスタン。
西トルキスタンは、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタン、カザフスタンの諸国 。

東トルキスタンは、中国の植民地支配下にある新疆ウイグル自治区、すなわちウイグル民族の住む地域である。

「G8」出席を前に、チェコのプラハを訪れていたブッシュ大統領は「ウイグルの母」と呼ばれる婦人に会った。
ラビア・カーディルさん。60歳。

中国で商売に成功し、かつては中国十大富豪の一人といわれた。政府批判がもとで投獄、政治亡命して巨額の財産は失ったが、今はアメリカに住んでウイグル人の人権擁護運動を続けている。

ウイグル・アメリカン・アソシエーションのウェブサイトによると、ブッシュ大統領は「自由と民主主義と人権擁護のために闘ってきた人」とラビアさんを称賛したうえで、「政治を変えないで経済だけを変革しようという中国の政策に強い疑念を感じる」と語ったという。

ラビアさんは中流家庭に生まれ,金持ちの家に嫁いだものの文革の嵐に翻弄されて離婚。その後、洗濯屋として一から出直し、持ち前の商才で、次々と事業を成功させ、ついには国の政策提言機関の委員も務めるほどになった。
社会奉仕活動にも力を入れ、中でもウイグル女性の起業を支援する「千の母運動」は大きな実績をあげた。

ところがその後、ウイグル人の人権擁護の演説をしたことなどから、政治的地位と財産を剥奪され、2000年には地元紙の記事を米国にいる夫に送付しただけで「国家機密漏洩罪」とされ懲役8年の判決を受けた。

一方、国際社会では「良心の囚人」と高い評価を受け、獄中でノルウェーの「ラフト人権賞」を受賞。05年に釈放されたあとは米国に政治亡命した。ノーベル平和賞にもノミネートされた。

ウイグルの人たちが住む中央アジアの大草原は、貧しくても、のどかで平和であってほしかった。でも現実は違う。あまりにも僕たちは世界を知らなさ過ぎるのだ。

ラビアさんは言う。

「クルドやガザやチェチェンを知っていても、ウイグルはまだ世界に認知されておらず、東トルキスタンと言っても、それがどこを指すのか知らない人も少なくない。まずは民主的な形で、世界に我々のことを知って貰うことから始めていきたい」(水谷尚子氏インタビューより)

この地域はトルキスタンという地名からもわかるようにトルコ(テュルク)系のウイグル人が多数を占め、イスラム教徒による建国がはかられたが、1949年に中国に統合され、新疆ウイグル自治区となった。その後、漢族が大量に移住し、政府からの経済的、政治的圧迫を受けたとするウイグル人の不満は高まっていった。

かつて西域と呼ばれ、東西交易で栄えた都市「楼蘭」の遺跡に近いロプノール湖は、中国の核実験場として使われ、多数の人々が放射能による健康被害を受けたとされている。

「私はもう新疆にはもどるつもりはありません。私が帰るのは、東トルキスタンが解放されたときです」 (同)

「日本でも、国会議員や大学生ら若者を前に、東トルキスタンやウイグル問題について話をしたい。日本の皆さん、そのような機会をどうか作って下さい」(同)

僕も含めて、遠くの国の人々の生活や苦しみを想像し、同情や共感を持ち続けることは困難かもしれない。このブログで書くことも無意味だといわれればその通りかもしれない。自分の日々の生活だけで精一杯なのだ。

知りたいから調べ、書きたいから書く。それだけの意味しかない。しかし、ウイグルも、ルワンダも、ダルフールも、「抑圧された少数民族の悲劇」という、それだけのことだろうか。

繁栄しているかに見える世界が、長期的に見ると実は崩壊に向かっているのではないか。抑圧された人々は、資源と利権を求め弱いものからの収奪を繰り返す「弱肉強食的」世界の政治経済潮流の犠牲者かも知れないのだ。

跋扈する金融資本主義は好決算の連続という数字のマジックによる成長幻想を生み出す。日本の大企業の史上最高益というのは、つまるところ円安とリストラ効果にすぎない、というのは言いすぎだろうか。欧米やBRICKs諸国の繁栄は大自然を破壊し、現地の人々を安い賃金で働かせた所産とは言えないだろうか。

大自然と人間を軽視し、電子で取引されるマネーの数字に踊らされる人類の未来は危うい。

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