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2007年7月19日 (木)

フロム・ロシア・ウイズアウト・ラブ

「ロシアからの暗殺者に狙われた」

英国亡命中のロシアの実業家はお世辞にも上手とはいえない英語で喋った。

ボリス・ベレゾフスキー氏の顔をテレビ画像で見るのは初めてだった。エリツィン時代には、政界の黒幕といわれた人物だ。禿げ上がった頭、鋭い眼光。顔の割には小さめの唇から、ひと言ひと言慎重に言葉がしぼり出される。

「先週、私の暗殺計画があることを英国警察から警告され、ロシアのセキュリティサービスの標的になる脅威から逃れるため国外に逃げた」

彼によると、英国を離れていたたのは6月16日から1週間。ロンドン警視庁は6月21日に暗殺計画に関連して一人の男を逮捕したが、起訴せず2日後に釈放し国外追放したという。男はロシアに帰り、その後、ベレゾフスキー氏は英国に戻ってきた。

ロンドン警視庁は殺人謀議で男を逮捕した事実を認めたという。しかし、何故ろくに調べもせずその男を釈放したのかが明らかでない。不思議な話である。

おりしも、英国とロシアは放射性物質ポロニウムによって殺害されたアレクサンドル・リトビネンコ氏の事件をめぐって対立が深刻化している。英国はロシアの実業家、アンドレイ・ルゴボイ氏を容疑者としてロシアに身柄引き渡しを要求、ロシアがそれを拒否していることへの報復としてロシア大使館の外交官4人の国外追放を決めた。一方、ロシア側も対抗手段をとることを示唆している。

ベレゾフスキー氏は、この外交官追放というタイミングでの記者会見について関連性を否定している。だがあまりにも時期が重なりすぎているうえ、自らの暗殺計画に関わって逮捕された人物が釈放されたという不透明さには、疑問が残る。

ロシアの駐英大使は「ばかばかしくて話にならない」とBBCラジオにコメントした。「ベレゾフスキーはマネーロンダリングや汚職や組織犯罪で告発され、ロシア政府は身柄引き渡しを要求しているが、英国は応じない。それこそが問題だ」

それに対して「ロシア大統領プーチンこそリトビネンコの殺人者だ」と激しい批判を続けているベレゾフスキー氏は「プーチン・ルールの終焉と無血革命を望んでいる」という。

どうしてロシアがベレゾフスキーを殺そうとしていると思うのかとの問いに、「リトビネンコ事件の鍵を握る証人であり、反プーチン派へのメインの資金源であるからだ」と答えた。

さて、このベレゾフスキー氏。ソ連でペレストロイカの経済自由化が行われたときにビジネスを始め、新興財閥に成り上がったいわゆる「オリガルヒ」と呼ばれる資本家の代表格。2000年3月の大統領選挙では、プーチンを支持したが、大統領となったプーチンは、逆に新興財閥の影響力を削ぎにかかる。

それまで影で政権を牛耳っていたベレゾフスキー氏は、反プーチン勢力の結集をはかったが、一般国民の間では評判が悪かったため孤立化した。このため下院議員辞職に追い込まれ、さらにロシア最高検察庁からアエロフロート資金の横領疑惑などを追及されたため、国外脱出した。

プーチン大統領に裏切られ、権力争いに敗れたベレゾフスキー氏の激しい憎悪は、これまでにも英紙のインタビューにクーデター計画をぶち上げるなどの形で噴出し、ロシア当局の反感を買っていた。

「強いロシア復活」を期待する国民に人気がある一方で、国際的には「強権的支配」と批判されるプーチン大統領。そこに英政府から外交官追放という強い圧力がかかった機に乗じて、ベレゾフスキー氏が反プーチンキャンペーンを張ったと見ることもできなくはない。

リトビネンコ事件の容疑者とされるルゴボイ氏は、6月2日のこのブログでも書いたようにMI6(イギリス情報局秘密情報部)やベレゾフスキー氏が事件に関与した可能性を指摘している。リトビネンコ氏とその後援者ベレゾフスキー氏はともにMI6のメンバーで、プーチン大統領を政権から追い落とすための情報収集をしていたというのだ。

真相はいまだ闇の中である。明確な事実としてはロンドン警視庁がベレゾフスキー氏暗殺計画に関わる一人の男を逮捕し、すぐに国外退去させたということだ。その経緯を今後、英当局が明らかにするのかどうか。そうでなければ、そもそも暗殺計画が存在したのかどうかもわからない。

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