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2007年7月13日 (金)

通訳の人間力が勝負を決める

先日、サンフランシスコで開かれたメジャーリーグのオールスター戦は、地元ジャイアンツ、バリー・ボンズのホームランに全米の注目が集まったが、この日は不発に終わり、ファンをがっかりさせた。代わりにイチローがランニングホームランでMVPをかっさらい、米メディアのテンションはいまひとつ。

当然のことながら、僕たち日本人にとっては鼻高々の試合だった。ゲーム終了後、われらがイチローの、MVP会見。グラウンドに颯爽とスーツ姿で現れたイチロー、アメリカの美女アナウンサーにカッコよく英語で答えてくれるかと思いきや、準備よく通訳がちゃんとついていた。

考えてみると、それが正解。イチローが英語でしゃべったら、英語が不得意な僕たち日本人にはカッコよく見えるかもしれないが、アメリカ人の目にはどう映るだろう。

ナルシストで、実は目立ちたがり屋でもあるイチローは、いつもどんな印象的な言葉を使おうかと考えている。自己演出は彼の最も彼らしい部分である。7年の大リーグ生活でかなり上達したとはいえ、その紡ぎ出したいこだわりの言葉を自ら英語で表現するのは無理だろう。そこは、自分のいつもの考えや言葉遣いのニュアンスを知り尽くした信頼できる通訳を使って全米のファンにアピールしなければ。

ところで、通訳といえば、一番記憶に残ったのが、昨年日本シリーズを制覇した北海道日本ハムファイターズ、ヒルマン監督の通訳だ。お立ち台でインタビューを受けるヒルマン監督の英語を見事な美しい日本語に変え、ファンの心をつかんだ。感謝の気持ちのあふれた、説得力のあるその日本語は、ヒルマンの人格をより高めるのに貢献していた。

そしてそのとき僕が思ったのは、ヒルマンが選手を掌握し動かすのに何よりもこの通訳の存在が大きかったのではないかということだ。ヒルマンの選手への指導や指示、激励や賞賛、慰めの言葉はこの通訳を通して伝えられる。通訳自身の言語力はもちろん人生観、人格、説得力、といった全人間力が、ヒルマンの監督としての仕事のレベルを左右する。そういう意味ではこのチームの躍進の陰の原動力といえる。

ヒルマン監督の専属通訳は、岩本謙一さんという。

岩本さんは、ニューヨーク・メッツで新庄選手の通訳を勤めていた。新庄がメッツを退団し日ハムに入ったのをきっかけに、メジャー数チームからのオファーを断って、故郷・北海道に帰ってきた。いつも監督の陰に寄り添い、その家族にまで気を配り、オフの日には、選手のデータなどを英語に訳する努力家だ。誰に対しても腰の低い謙虚で律儀な人であり、プロフェショナルな通訳のあり方を絶えず追求している。

スポーツの世界もグローバルな人事交流が行われる時代になった。野球にしても、サッカーにしても、遠い異国から引っ張ってきた優秀な外人監督を生かすも殺すも通訳しだいだと思う。

たとえば、サッカー日本代表のイビチャ・オシム監督。哲学者然としたこの人の難解な指示を選手に伝えるのに3人もの通訳の方々が大変苦労をしているらしい。日本代表が勝利を手にするには、この通訳の方々が日ごろどれだけオシム監督とコミュニケーションを深め、自分自身を磨いて、監督と共感しあえるか。そして、“オシムの魂”を愛情と説得力のある日本語で伝えられるかどうかにかかっている。

 

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コメント

個性の強いイチローやオシム監督の通訳の苦労は察するに余りあります。
同じことは翻訳者についても言えると思います。私はドラッカーの翻訳をした上田惇生の文章はすばらしいと思います。ドラッカーは日本語の方が分かり易い、と言う人さえいます。

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