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2007年7月21日 (土)

トム・クルーズ「ワルキューレ」にドイツが拒否反応

トム・クルーズの新作アメリカ映画「ワルキューレ」の撮影にドイツ国防省が待ったをかけた。ドイツ連邦軍施設内に立ち入ることはまかりならぬ、というわけだ。

この一件をきっかけにクローズアップされたのがヒトラー暗殺を企てたクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐という人物。

大佐役を演じるトム・クルーズが、ドイツで「金稼ぎのカルト集団」とみなされている米新興宗教「サイエントロジー」の信者であることが問題になった。

「水晶の夜」と呼ばれる1938年11月9日の深夜、ナチスがドイツ全土のユダヤ人住宅、商店などを襲撃、放火した。砕け散った窓ガラスが月明かりに照らされて水晶のように輝いた。煽動したのはヨーゼフ・ゲッベルスといわれている。

この事件に反感を抱いたナチス将校、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐がヒトラー暗殺のための「ワルキューレ」計画を企て、失敗して処刑された。ドイツではナチスに抵抗した英雄として賞賛の対象になっている。

「当時、父は裏切り者とされ、家族は大変苦しみました。戦後も、私たちは気持ちの整理がなかなかつきませんでしたよ」

そう語るのは今年72歳になるシュタウフェンベルク大佐の長男ベアトルド氏だ。

制作会社側は「ナチス体制下で英雄的な抵抗活動をした人間を描きたかっただけだ。クルーズの能力と個人的信条は切り離すべきだ」と主張する。

しかしベアトルド氏は「サイエントロジーは宗教でない。金儲けの事業だ。クルーズは父に指1本たりとも触れさせない」と言い切る。ドイツ紙も「これは冒涜に近い」などと、反対する論調が目立つ。

トム・クルーズは自身に失読症という学習障害があり、障害者に関連した「レインマン」や「デイズ・オブ・サンダー」などに主演している。サイエントロジーの活動にのめりこんだのは彼がそういう宿命を背負っているからでもあるだろう。サイエントロジーは、「個人の精神性と能力と倫理観を高めることによって、より良い文明を実現しよう」と主張する宗教団体で、米国では受け入れられている。

しかし、疑似科学、組織的詐欺、カルト集団といった批判が常につきまとい、とくに「ナチス」を経験したドイツでは“特異なイデオロギー”への拒絶反応が強い。

映画の切り口がどんなものになるのかは知らないが、少なくともあのナチス体制下のドイツの中に、シュタウフェンベルク大佐をはじめとする良心の人々が存在した事実を知ってもらうという点では、ドイツ国民にとっても意義深い作品に違いない。

だから結局、この問題はナチスに対する現代ドイツ人のスタンスが表れたと考えるのが妥当ではないだろうか。すなわちー。

「ドイツ政府と大多数の国民は、ナチス時代にユダヤ人にあたえた、はかりしれない苦しみを認識している。ドイツ国民の名の下に犯罪がなされた。それには道徳的・物質的な補償の義務がある」
このように1951年のアデナウアー西独首相演説でいちはやく謝罪と補償を表明したドイツだが、いつの間にか第二次大戦の降伏日を「解放記念日」と呼び、「ドイツがナチスの支配から解放された日」と言うようになった。つまり、全てはナチスという「特異な集団」の仕業で、ドイツ人は被害者だ、という見方に転換した。

その良識ある本来のドイツ人の象徴であるシュタウフェンベルク大佐だからこそ、「カルト集団の活動家」に関わってもらいたくない、という心理が働くのだろうか。

天下の二枚目スター、トム・クルーズも、ユダヤ系のブライアン・シンガー監督も、まさかこんな事態になるとは想像していなかったに違いない。

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