サブプライムローンの罠
これではあくどい“マチキン”と同じである。世界の株式市場を揺るがしている米国のサブプライムローン。
貧しい人にマイホームの夢をあおり、だましに近いセールストークを駆使して高利で貸し付ける。その債権を証券にして世界にばら撒き、ハイエナのような投資家が群がる。
「強欲金融資本主義」もここに極まれり、である。
そのローンが焦げ付いたのは金融業者の自業自得だが、わずかな財産も、残らず持って行かれた貧者の悲嘆の声はあまりに切ない。
2000年以降、大幅な金利引き下げ政策によりアメリカで住宅ブーム起き、住宅価格は値上がりし続けるという「土地神話」が生まれた。かつての日本がそうだった。
不動産価格や家賃がどんどん上がっていくのを見て、低所得の人々も不動産所有による資産形成を考えるようになる。そして、意を決して「給料は少ないし貯金もほとんどないが、家を買いたい」と住宅ブローカーに申し出る。
「問題ないです。大丈夫ですよ」と愛想のいい担当者。
「最初は低額の支払いで始まるローンをお勧めします。書類は必要ありません。手数料はかかりますが、全部ローンに組み込みますので、最初にお金を用意する必要はありません。銀行のほうはこちらにお任せ下さい」。
2004年、住宅需要が一巡しブームにやや陰りが見え始めたころだった。業者に新たな顧客として目をつけられたのが、急増していたヒスパニック系移民や低所得者層だ。自己破産歴のある人やクレジットカードさえない移民でも「OK」というあやしげな融資。それでも多くの人々がアメリカンドリームの幻想を抱いた。
そしていつの間にかインフレ懸念から政策金利が上昇、都市の住宅価格は下がり始める。ローン条件が再設定され、6%の固定金利が10%に、さらに12%にと引き上げられていった。これでは払えるわけがない。全ての計画が狂った。
ローンを実行した銀行が家を差し押さえる。家の窓に板が貼りつけられ、競売に付される。近くの住宅の価格までもがいっそう押し下げられる。
住宅価格が上がっているうちは担保価値の上昇分で新たなローンを組み、新車購入など消費につぎ込む人も多かった。個人消費の底上げに役立った。しかし、いまやそれもはかない夢だ。
国も、国民も借金体質でありながら景気上昇を続けてきた米国経済の矛盾がここへきて露呈してしまった。自己破産が急増し、不良債権が国全体に増えると、金融機関が新しい融資を渋り、経済が停滞していくことになる。アメリカ経済の先行きは思ったより厳しいのではないだろうか。
GDPの7割を占める旺盛な米国の個人消費と円安の恩恵をたっぷりと享受してきた日本の輸出企業は、これまで以上に魅力ある商品開発と、米国依存から脱却する柔軟な対応力が求められるだろう。
さもなければ、最高益続出の輝かしい決算は「砂上の楼閣」であったことになってしまう恐れすらある。
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