小池百合子シリーズⅥ 沈黙は攻撃なり
どういうわけか、小池百合子前防衛相に、遠藤農水相辞任についてのコメントを求める記者がいた。小池氏は一瞬、何かを言いかけたが、言葉を飲み込むように黙りこくったまま、堅い表情で車に乗り込んだ。
議員会館から出てくるのを待っていたふうだから、小池番というのをつけているのだろうか。
遠藤農水相の件など、関係も関心もない質問に答えようもないだろうが、意識的にマスコミへの露出を避けているように見える。その点では、小泉氏の首相退陣後とよく似ている。
「今は我慢」と心得て、時が来るのをジッと待つ姿。そう思えなくもない。
安倍首相は、派閥の領袖クラスの大物議員を閣内にズラリと並べ、挙党体制を組んだように見えても、これでは首相としてのリーダーシップをとりにくいだろう。年上に人一倍気を遣う首相にとって「仲良しクラブ」を解体した分、思うように動かせる閣僚はきわめて少ない。
今回の遠藤農水相辞任への段取りも、実際には麻生幹事長と与謝野官房長官によって進められた印象が強い。
考えてみれば、安倍さんに政治的な実績はさほどない。拉致問題で「正義の味方」としてカッコよく見えたのが安倍人気に火をつけただけだ。首相就任後の支持率下落は周知の通り。
参院選敗北によるアク抜けで内閣改造後にやや支持率は上がったが、今後の政局運営は、民主党が参院第1党となったことできわめて困難な情勢である。
野党の攻勢の矢面に立たされる安倍さんは、公務員改革を断行しようとして、官僚から反発を食らい、国民にも理解されず、まことに気の毒というしかない。
もはや、衆院議員の大半が来るべき時に備えて動き始めているのではないか。解散、総選挙となれば、結果によっては政界再編は避けて通れない流れだ。自民も、民主も党内に矛盾を抱え、将来図の再構成を迫られている。
“泥舟”に共に乗り、嵐にあってエネルギーを削がれてはチャンスを失う。船に決して近づかず、近い将来の見通しを立てて、静かに戦略を構築し、しかるべき時が来たら、いっきに走る。そういう、ある意味わがままな智恵を持った人が、勝利者になるかもしれないのだ。
「男の居城」防衛省に乗り込み、55日間の孤軍奮闘を演じたあと、ポストに恋々とする閣僚や官僚たちを横目に、スパッと防衛大臣の地位を返上した小池百合子氏は、クラウゼヴィッツの「戦争論」の一節を、その著書に引用している。
「最上の防衛戦略は、自ら攻撃するだけの勇気を持つこと」
だとすれば、防衛大臣を辞めたのも、今の沈黙も、「逃げ」ではなく「攻撃」か。「アイ・シャル・リターン」という退任の弁を、政権中枢へのリターンを決意したものと受け取ってみてもいい。
これからはインテリジェンス(情報戦)が国家の命運を決めるということを、しっかりと認識している政治家の一人でもある。
小池氏がどんな情報をもとに政治家としての今後のプランを練っているのか、気になるところだ。
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