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2007年9月 3日 (月)

ブット帰国でパキスタン政権は?

パキスタンの元首相、ベーナズィール・ブットがどうやら、9年ぶりにパキスタン政界に返り咲くことになるようだ。

亡命先の英国・ロンドンで記者会見して帰国の意思を明らかにした。ただし、ムシャラフ大統領との「パワー・シェアリング」(権力分担)についての話し合いはまだ決着していないという。

いつの間にか54歳になった。黒い髪、くっきりした顔立ち。かつてビープル誌で「世界でもっとも美しい50人」に選出された美貌はまだ健在だ。

汚職容疑による逮捕を逃れて亡命したブット元首相がパキスタン政界へ復帰する背景には、大統領選挙を控えてムシャラフ政権が窮地に立たされていることと、この政権を支持せざるを得ない米国の思惑がある。

パキスタンという国は軍部の力が異常に強い。だから、選挙で成立した政権が、軍のクーデターにより、すぐに瓦解してしまう。

このため、パキスタン経済のスポンサーともいえる米国としては軍を掌握している人物を支援するしか選択肢がない。民主化の遅れで国民の厳しい批判を浴び、テロ対策もままならず、国の混乱状態を招いた張本人、ムシャラフ大統領が温存されている理由もそこにある。

しかし、問題は11月に予定されている大統領選挙だ。もともと陸軍参謀長から無血クーデターで大統領になったのがムシャラフである。選挙で勝ち取った地位ではない。だから選挙に勝てる自信はまるでないのだ。

そこで、ムシャラフが考えたのが非常事態宣言だ。これを宣言すれば総選挙の延期などが可能になる。大統領選は国会議員らによる間接選挙のため、与党多数の現議会で実施したいというハラだ。

しかし、非常事態宣言は更なる混乱を招く恐れがあり、「自由と民主主義」を掲げる米国は民主的な選挙をパキスタンに要求したとみられる。

仕方なく最後の救いを求めた相手が政敵、ベーナズィール・ブットであった。ブットは国民的人気があり、彼女と組むことによって選挙を乗り切って政権維持が可能と踏んだのである。米国もこの考えに同調した。

ブット側は「パワー・シェアリング」にあたって、ムシャラフ大統領が軍籍を離脱して陸軍参謀長を辞任するという条件を突きつけ、いったんは合意が成立したという情報がブット側からパキスタンのメディアに流れた。しかし、すぐにムシャラフ大統領サイドがこれを否定。結局は交渉がまだ決着しないまま、ブット元首相のパキスタン帰国表明がなされたわけである。

さて、現政権が負けない仕組みをなぜ米国はつくらなければならないのか。当ブログ「米軍出動か?緊迫するパキスタン」でもふれたように、米国にしてみれば対アルカイダ、タリバン戦の最前線であり、少なくとも親米国家のパキスタンは世界の最重要拠点だ。

しかし、ムシャラフ大統領の支持基盤は陸軍であり、陸軍将校団はムシャラフ大統領に忠実だが、イスラム原理主義勢力の影響が陸軍内部にもジワリと浸透しているという。何らかのきっかけさえあれば、内部からクーデターや暗殺の動きが起こらないとも限らない。

もしムシャラフ大統領が選挙に負け、政権から去るようなことがあれば、どうにかバランスを保ってきた軍内部の力関係が変化し、分裂して、一気に内戦状態に突入する懸念さえある。

かりに、イスラム過激派勢力が実権を握り、イラン、北朝鮮、リビアに秘密裏に核開発技術を供与していたAQカーン博士の「核闇市場」を支配するような事態にいたれば、世界に与える脅威は計り知れない。

軍籍離脱を求めるブット氏と、軍を基盤とするムシャラフ大統領のかけひきのしだいによっては、パワーシェアリングがうまくいかないことも考えられる。そのうえ、パキスタン最高裁によって帰国が認められたムシャラフ大統領批判の急先鋒、シャリフ元首相も9月10日にパキスタン入りすることを明らかにしている。

まだまだパキスタンの政治情勢は予断を許さない。世界を巻き込む危機をはらみながら緊迫した状況が続きそうだ。

 

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