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2007年10月14日 (日)

アル・ゴアとアメリカの真実

アメリカの元副大統領、アル・ゴア氏がノーベル平和賞をもらうことになった。

なぜ、平和賞なのか。ノーベル賞委員会が発表した授賞理由はこうだ。

「激しい気候変動は地球資源の獲得競争に発展する恐れがある。ゴア氏は早い段階で世界が直面する気候変動の危機に気づき、最も対策の必要性を理解させる努力を行った人物である」

つまりゴア氏の活動が、戦争につながる地球資源の獲得競争を防ぐ「平和活動」として認められたことになる。

ここに指摘されたゴア氏の「努力」とは主にスライドやデータによる講演活動である。おそらく、それだけだったら、ノーベル賞とまでいかなかったであろう。

彼の活動を世界に知らしめたのはデイビス・グッゲンハイム監督の映画「不都合な真実」だ。

アル・ゴアの姿を通して地球温暖化対策の必要性を訴えたドキュメンタリー作品である。この映画が、製作者の想像をはるかにこえる反響となってアメリカから世界に広がったことが、ノーベル賞委員会の判断に大きなインパクトを与えた。

それにしても、人間の世界はヘンテコなものだ。石油に依存する文明をつくってきたCO2排出“最先進国”のアメリカから“主役”が登場したのである。最も環境に不熱心であり続けた国から現れたヒーローが環境を説き、世界が拍手を送っている。

人類にとって大きな転換点となった京都議定書のホスト国であり、省エネ技術で世界のトップを走る日本はカヤの外だ。

地球温暖化はまさにアメリカ文明そのものの問題なのだ。ところが「不都合な真実」はそのことを指摘していない。

 20世紀に入り、石炭に代えて石油をいち早く利用したのがアメリカである。テキサスから大量の石油が出たからだ。米映画「ジャイアンツ」で、ジェームス・ディーン扮する男が石油を掘りあて一夜にして億万長者になって喜ぶシーンを思い出す。
 
人口増加や経済成長とともに米国産の石油が不足しはじめたがゆえに、中東など世界中で石油あさりをはじめた。いずれ枯渇する石油を、少なくとも代替燃料が確立するまで確保しなければアメリカという国はなりたたない。だから、石油のために必要ならば戦争さえ起こすのである。

もし、「不都合な真実」がその“まぎれもない真実”をはっきり指摘したら、アメリカという国家を動かしてきた石油産業、軍需産業はどう出てくるだろう。

さすがのゴア氏も政治家である。そこまで踏み込んでいくのはよほどの勇気がいるだろう。石油、軍需、金融などアメリカの大資本家をいきなり敵にまわせば、資金面からいっても、政治活動がやりにくくなるかもしれない。

また、この映画には科学的な疑問点もある。グリーンランドを覆う氷が溶けて近い将来、水面が7メートル上昇するかもしれないという部分については、英国高等法院が「科学的な常識から逸脱している」と指摘し、学校での上映に慎重姿勢を示している。

とはいえ、長い目で見て、アメリカがアル・ゴアのような政治家を必要としていることは間違いない。いまの路線を続ければ、アメリカの繁栄にも限界があることは明らかだ。

「脱石油社会」の実現へ向けて、大きく政策転換しなければ、未来がないことくらい誰もが見抜いている。いつまでも目先の利益だけを追求しているわけにはいかないのだ。

森林破壊にもつながるバイオエタノール燃料や、地球汚染、核拡散が心配される原子力発電など、対症療法的なCO2削減ではなく、将来の文明のありようを見据えた根本的な地球環境対策に、全人類がともに取り組まなくてはならない。

「環境」でEUに遅れをとっているアメリカが、リーダーとなって動き出せば温暖化対策のスピードは格段にアップするはずだ。

アル・ゴアのノーベル平和賞受賞を機に、アメリカ社会のモノの考え方が、いい方向に変わっていくなら、おそらく彼が大統領になる日も来るだろう。そうなれば、世界は「地球環境」を核とした「新しい文明」をめざすことができるかもしれない。

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コメント

ネットサーフィン?で今日、こちらのサイトを知りました。しっかりしたご意見で、楽しく拝読させていただいています。先日アメリカに行ってきて、地域によっても違うようですが、日本に比べ環境に関しての意識が低いと思いました。 これで、少しは地球のことをアメリカの方が考えてくれることを望みます。
中国も何とかならないかしら?アレルギーがひどくなりそうで気がかりです。

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