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2007年11月24日 (土)

厚労省お役所仕事に苦しんだ「万能細胞」山中教授

米科学誌「セル」電子版に、その衝撃的な研究成果が発表されたのは、昨年8月11日のことだ。

京都大学の山中伸弥教授と高橋和利特任助手が、マウスの皮膚の細胞から“万能細胞”をつくることに世界で初めて成功した。

次の課題は人に応用できるかどうかだった。世界の研究者が注目し、いっせいに山中教授らの後を追い始めた。

そして1年あまりが経過し、山中教授らはヒトの皮膚から「人工多能性幹細胞」(万能細胞)をつくることに成功した。人類の歴史的事件ともいえる偉業だ。

患者自身の皮膚細胞からつくる“万能細胞”は、その患者の遺伝子を持つ血液や脳、骨、臓器を形成できるため、拒絶反応もなく「再生医療」ができる。まさに難病に苦しむ人への福音である。

ヒトの受精卵や卵子を使用してつくる万能細胞「ES細胞」と違い、倫理上の問題がないことも、画期的成果といわれるゆえんだ。

当然、マウス実験で先行した日本が、この分野では独走かと思われた。

ところが、医学研究の競争はし烈だ。いつの間にか米ウィスコンシン大のジェームス・トムソン教授らのグループが猛烈なスピードで追い上げ、山中教授らとほぼ同時に万能細胞をつくった。

そして、今月20日の「セル」電子版に発表した山中グループに「世界初」を独占させないよう、急きょ発表を前倒しして同じ日の「サイエンス」に掲載した。

ホワイトハウスは今回の発見について、「人命の神聖さを傷つけることなく、医学的問題を解決できる方法だ」と称賛した。「ES細胞」にはあれだけ強硬に反対したブッシュ大統領も大喜びだという。

山中教授は日本のテレビで「一年前は独走していたが、ウィスコンシン大やハーバード大が追ってきている。これからいっそう激しい競争になるでしょう」と話した。

しかし、タイムズ電子版には、山中教授のホンネが語られている。日本政府の姿勢についてである。

「一つの実験のたびに500ページもの書類3部を厚労省に提出しなければならない。そんなことに労力を費やす間に、ライバルの研究チームは10回以上実験できる。もう一つの問題は、厚労省の気の変わりやすさ。成功している研究でも予算を奪う。3年でプロジェクトが完成できなければ、あきらめろということです」

こういう状況のなかで山中教授らは研究を続け、36歳女性の顔の皮膚を用いて万能細胞を誕生させた。

次の段階は、いよいよ「再生医療への応用」である。そのためには万能細胞から目的の細胞だけを作る手法を確立しなければならないのだ。例えば、脊髄損傷の患者には、脊髄の細胞を、心臓移植のためには心臓筋肉の細胞を、というように。

そして、むやみに細胞が増えたり、他の細胞に変化したりしないよう安全性を確保することも求められる。

山中教授は「5年くらいかかるかもしれないが、やりようによっては2~3年で可能かもしれない」と言う。

米国はホワイトハウスの声明でもわかるように最大限の支援体制を整えるだろう。日本も負けてはいられない。

今回の成功をうけてようやく政府も本格的に動き始めた。まず文部科学省が、万能細胞による再生医療の実用化に向け、本格的な研究に乗り出すことを決めた。内閣府も早期の臨床応用のため「オールジャパン」体制で取り組むという。

研究のスムーズな進展をサポートするには、潤沢な資金、研究環境の整備、研究者の増員が必要である。

これまで、典型的なお役所仕事で、大切な研究の時間を奪ってきた厚労省はどんな対応を考えるのだろうか。

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