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2007年11月23日 (金)

ミシュラン信者をシラケさせた東京版

なんでも格を付けたがる時代である。情報過多だから、権威のお墨付きがないと飛びつけない。

日本では、とくに東京がひどい。テレビで紹介されたり、有名雑誌に載ると、とたんにどっと客がつめかける。テレビも、雑誌も、締め切りに追われ、さほど吟味されているとは思えない。「○○で当店が紹介されました」という貼紙があちこちで見られる。

タイヤのメーカー「ミシュラン」が三ツ星とか二つ星とか採点して、ホテルやレストランを自分勝手な基準で評価する「ミシュランガイド」はもともと、ドライブのガイドブックとして1900年に発行されたのが始まりだ。

それが、いつの間にか世界のホテル・レストラン格付けの権威になっている。単なるお遊びなら何と言うことはないのだが、権威となるとちょっぴり意地悪なコトを言ってみたくもなる。

5人の「覆面」調査員がフランス・オーヴェルニュからはるばる東京に乗り込んで、レストランガイドをつくるために1年以上かけて調査をしたという。どのくらいコストがかかっているのだろう。さぞかし、調査員というのは栄養過多で大変なのではないだろうか。ただし、その努力には大いなる敬意を払いたい。

ガイド本の総責任者、ジャン・リュック・ナレ氏は「東京の料理のクオリティの高さには非常に驚かされた」とか。それはそうだろう。東京は美味しくてあたりまえ。まずくては商売にならない。そのうえ他店にないオリジナリティを求められる。

グルメ評論家とか呼ばれる連中は、「ミシュランガイド」のようなツールが誕生すると、仕事が増える期待がふくらむのか、「日本の食文化の向上に寄与するものです」としたり顔だ。

しかし、ガイドなどに載せてもらいたくないという気概のある名店も多いのではないか。味やサービスへの評価はお客がするもので、雑誌ではない。ガイドはあくまでガイドだ。

こうして、ミシュランに選ばれた店名はブランドになり神話になり、料理人は教祖のようにまつりあげられる。そして、人も店も時とともに変化するにもかかわらず「三ツ星レストラン」という輝かしい称号だけが残る。

シェフが「コックさん」といわれていた時代が懐かしい。ケーキ職人はいつのまにかパティシエになった。蕎麦もうどんも「道」になり、上手な職人は「名人」として崇められる。ラーメン店主も、テレビによって達人になり、調子に乗ってスープに工夫を重ねすぎると、最後には見知らぬ食べ物ができあがる。

老舗中の老舗「船場吉兆」が、落ちこんだ穴とは、「吉兆」を創った人がいまはもういないのに、「吉兆」を続けねばならないという現実だ。

創業者の「魂」を受け継いでいくことは至難の業である。それでも、企業は利益をあげ成長し続けねばならない。食の「芸術」が「算術」に置き換えられる。

佐賀牛と但馬牛の味の差が分かる人は少ないだろう。だけど、但馬牛だといって店に置けば、高く売れる。天下の「吉兆」は、但馬牛とか神戸牛とかのブランドで売らなきゃならないらしい。

これは、あまり高級な文化とはいえないのではないか。名前や記号が、本質から離れて価値を持つのは。

ファッションにしても同じことだが、消費者もそろそろ、ブランド信仰から卒業して、自分の尺度を持つべきだろう。

舌のこえたセレブだけを対象にするのなら、あちこちに出店しないことだ。最高の調理人の腕と、最高の食材、最高のサービスを限定された場所で提供すればいい。

「芸能人格付けナントカ」というテレビ番組で、目隠しされた芸能人が10万円のワインと1000円のワインとを飲み比べる企画があったが、1000円のワインがうまいという人のほうが多かった。

ならば、その人にとっては1000円のワインのほうに価値があるわけだ。オレは1000円のほうが好きだ、と胸を張ればいいではないか。

昨年5月26日、ミシュラン社主、エドワール・ミシュラン氏が、ブルターニュ沖で釣りボートに乗っていて遭難し、亡くなった。

ミシュラン自身も新しい時代に入っている。儲かる「トウキョウ」への野望がそれを物語っている。フランス限定のほうが価値があった。もっと「希少価値」を大切にしなくてはならない。

世界は地球的規模で変化が起こっている。人類に知恵がなければ、しだいに資源が尽き、乏しくなっていく食料を奪い合って、戦争が起こる日が来ることは容易に想像できる。

必要なのは、抑制のきいたほどよい楽しみ方である。極度に食をむさぼることは文化ではない。飢えに苦しむ10億人近い命のことも忘れてはならない。

限られた資源を無駄なく使って、いかに上手に、おいしいものを持続的に提供していくか。そこに「食」にたずさわる人の「道」がある。

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コメント

ミシュランの星つきレストランは確かニューヨークが39軒、パリが65軒、東京が150軒で、東京が世界一、ということのようですが、まあこんなことは言われなくても当たりまえのような気がします。

パリでもリヨンでもプロバンスの片田舎でも今や日本人の見習いコックが居ないフランスの町ってあるんでしょうか。見習いを終えて既に帰国して働いているコックはその何十倍か、数知れません。
そもそもそうしたプロやセミプロでなくても普通の家庭に和食・洋食・中華と最低でも3種類食器の揃っている国が他にどこかありますか。

ついでに言わして頂けばこの星幾つとかA+とかA-とかのレーティングやスコアリングの流行には全くうんざりします。ムーディーズやなんとか&プアーズとかは最近サブプライムローンで評判を落としてざま見ろといいたいところですが、他にも山ほどあります。

例えばISO9000とかSO14000とか永久にキリのない環境格付け屋なんかは明らかにEUドイツの陰謀ですし、TOEICとかTOEFLとかの英語力(実は米国弁)の点付け屋なんかも米国の謀略ですね。
単なる権威が次第に権力と一体化する最近の流れはこの2つを峻別してきた日本固有の文化と価値観の破壊そのものです。

かつて「有閑階級の理論」で消費はやがて記号の消費(=みせびらかし消費)に向かうと言ったのは経済学者のヴエブレンですが、下流社会が拡大しているといわれる今の日本で同じ現象が起こるというのはまさに噴飯物です。

飯なんか<定時に食えればいい>のです。ソクラテスは人間を形成する顕著な3つの器官、頭脳と胸腔と胃袋をもってそれぞれ哲人政治、貴族政治、金権政治を象徴させていますが、グルメは金権政治そのものです。

麻布の和食屋<かどわき>はミシュランの格付けを天晴れ辞退したそうですが、HPを見ると会食にざっと数万円かかるようで、これでは金権政治家が山田洋行さんにでも払ってもらうしかなさそうです。

日本固有の文化と価値観の破壊。ほんと、その通りでござるな。ごく一部の有閑階級のみせびらかしに、拙者のような者は付き合っておれん。

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