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2007年11月26日 (月)

カルト的錬金術師に魅せられるトップリーダーたち

前首相、安倍晋三は少しずつ元気を取り戻しているらしい。「体調の悪化が思考にまで影響を与えるようになった」と辞任表明当時の状況をホームページで振り返っている。

一時は、冷静にものごとが判断できなくなっていた。いかに持病を抱えていたとはいえ、想像を絶する重圧が心にのしかかっていたのだろう。

安倍晋三が最も輝いて見えたのは小泉政権時代だ。

2002年秋のことである。東京のホテルニューオータニで、「慧光塾」代表、光永仁義氏の誕生パーティーが盛大に開かれていた。

当時の官房副長官、安倍晋三がステージに立ち、祝いのスピーチをした。小泉首相とともに北朝鮮に乗り込み、5人の拉致被害者の帰国を実現させて数週間後のことである。このころ、安倍は政界にすい星のごとく現れた「プリンス」であった。

「毎日毎日いろいろ、めまぐるしいことがあるわけでございますが、 これも本当に光永さんのご指導のおかげだなと感謝しているところでございます」

光永氏は05年7月、59歳で亡くなったが、安倍はその後首相になってからも、後継者とされる人物の影響を受け続けた。突然の辞任会見とほぼ同時に、「慧光塾」推奨の「神立の水」や後継者の霊視に頼るさまが週刊誌にすっぱ抜かれた。“お告げ”が閣僚人事まで影響したことを指摘していた。一時は、そのスクープ記事が辞任の真の理由ではないかという憶測も乱れ飛んだ。

「慧光塾」は表向き、経営コンサルタントを業務とする株式会社である。しかし、実態はどうみても新興宗教に近い。「慧光塾」パーティーの会場となった、ニューオータニそのものにも“異変”が起きている。1ヶ月に一度、オーナーを先頭にホテルの外周に“清め”の塩撒きをしているのだ。悪霊が侵入しないように、という「慧光塾」の指導があるらしい。

どうやら日本を代表するホテルの三代目社長、大谷和彦氏もその教えに忠実に従っているようなのだ。重要な社内の人事でさえも、光永存命中は、姓名や生年月日による光永の“お告げ”で決めていたフシがある。

光永氏の長男と、建設大手「穴吹工務店」社長の令嬢との結婚披露宴もまたニューオータニで盛大にとりおこなわれた。貴乃花親方夫妻も出席していたという。

それにしても、おそらく相当な献金を必要とする“カルト的錬金術師”をいとも簡単に信じてしまう有力政治家や有名企業の経営者の心に一体何が起こっているのだろう。

古今東西、権力者は孤独であるがゆえに、預言者や宗教家に頼ることが多かった。あり余る財産、人を畏怖させる高い地位、快楽の宴にひたる日々。それら持てるものを守らんとすればするほど、心配や恐怖が湧き出てくる。心を少しでもおだやかにしてくれる存在を必要とした。

「慧光塾」のターゲットは成功者たちである。成功者や資産家を狙うカルト的錬金術師は「慧光塾」だけではないだろう。いわゆる社会の強者の心の弱みを衝いて、巧みな言葉で盛者必衰の恐怖をあおり、超能力的なイメージを着色した“お告げ”や、もっともらしい“道具”などによって解決策を説く。

具体的なその手法は知るよしもないが、あるていど想像はできる。例えば、超一流外資系ホテルの日本進出におびえる名門ホテル経営者がいたら「このままでは、あなたのホテルは間違いなくつぶれる」と確信に満ちた目で相手を見つめる。そして、それを防ぐにはまず・・・」と口からでまかせながら、不思議な説得力を持つミステリアスな言葉を告げる。おびえている人間には、少々論理がおかしくても、ありがたく聞こえるものだ。

また、体の不調やケガに苦しみつつ相撲をとっている大横綱がいれば、「このままでは、あと二、三場所もてばいいほうだ。あんたは足が悪い、腰が悪いというけど、それは違う。体の芯をなおさねばならない。それが根本だ」といいつつ、手をへその辺りにかざし「天のパワーが私を通して伝えられいる」と安心の気持ちへといざなう。

ついでながら、占い師や霊能者のなかには、「コールドリーディング」なる手法をつかうことがある。

たとえば「あなたはいま寂しさを感じることがあるようですね」と誰にでも当てはまることをいい、相手の反応から心中を読み取って巧みに話を展開する。相手は「自分のことをよく分かってくれている」という思い込みがどんどんふくらみ、いつか完全に信頼を寄せるようになる。

「信じるものは救われる」。たしかにプラスの面もあろう。しかし、大金を投じるほどのものではない。

人は誰しもさほど頑丈な心を持っているわけではない。弱くてもいい。弱さに徹すれば、それも強さだ。

ただし、欲が強いほど、反作用としての恐怖が生まれ、霊感など超能力を売り物にした商法につけこまれるスキができる。安倍晋三の欲は、歴史に名を残す宰相になることだっただろう。

だから、憲法や教育、そして官僚支配構造の改革など、大きなテーマに取り組もうとした。それを否定するつもりは毛頭ない。志は純粋なものだったと信じたい。

しかし、現実には、既得権を守ろうとする官僚と、官僚べったりの政治家の反乱にあって苦汁をなめたあげく、父、晋太郎氏も握れなかった政権をいとも簡単に放り出した。福田政権になってからの守旧派の巻き返しを見るにつけ、残念な思いがする。

閣僚の不祥事などが続きマスコミや野党に攻め立てられ苦しんでいるときに、その法灯明となる確かな心の指南役がいたら、と返す返すも悔やまれる。

                               (一部敬称略)

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