日米防衛談合組織?と額賀氏の関係
話はかなり昔にさかのぼるが、1960年、安倍前首相の祖父、岸信介首相は日米新安保条約をめぐる国内の大混乱に直面していた。
数十万人にもおよんだ安保闘争のデモ隊をどうおさえるかに腐心していた岸は戦前からの盟友、児玉誉士夫に力を借りることにした。当時、動員できる警官は1万五千人ていどだった。
児玉の指示で、政府の使者として暗黒街の親分衆の会合に向かったのはのちの運輸大臣、橋本登美三郎であった。そして、稲川会、住吉会など全国の暴力団、右翼団体、テキヤ連合が結束し、デモ隊に対抗する数万人の「警備隊」を結成した。
戦後、児玉を仲介に国の「オモテの勢力」と「ウラの勢力」が目に見える形で手を結んだ初のケースだった。
橋本登美三郎は1976年8月、ロッキード事件で、受託収賄容疑で逮捕され、80年の衆院選落選で引退した。
その選挙地盤と票田を引き継いだのが、同じ茨城県行方郡出身、早大雄弁会の後輩、額賀福志郎である。
額賀は産経新聞記者時代に田中派番を担当したこともあり、新聞社を退職して県会議員に立候補しときから、田中派の有力代議士、橋本の後ろ盾を得ていたのだ。
その後、額賀は田中派―竹下派―小渕派―橋本派―津島派と、親分だけは変わっても、中身は変わらない金権体質の派閥に身を置き、しだいに「頭角」をあらわした。商工族、防衛族の両面を持つ政治家だ。
実は、米軍普天間基地のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設計画で、滑走路をV字形にする構想を思いついたのは額賀である。
「夜中にひらめいた。2本の滑走路を造って住居の上空を飛ばないようにしようと思った」と、かつて日本記者クラブで語った。
防衛疑惑の本丸は普天間移設問題をめぐる巨大な利権である。年平均200億円の利権構造があるといわれる。
「テルカン」こと、社民党の照屋寛徳は当初の計画より規模や機能が拡大したことに怒り、「V字型滑走路基地の事業をめぐって、特定の土建業者、官僚、政治家らがうごめき、工作し、不正に利権をむさぼっている」と国会で再三にわたり防衛省にかみついている。
しかし、他の地区への移転案が出ると額賀が所属する派閥「平政研」から反対の大合唱が起こった。
この新基地建設には日本国民の血税が投入されるが、どれだけ必要なのかまだはっきりしない。少なくとも1兆円以上はかかる事業だろう。
ここに、建設業、軍需産業その他の利害がからみ、政治家が介在する。平成研のV字型滑走路基地への固執は、すでにできあがった「利権構造」を守ろうとするかのようだ。
さて、日米の防衛利権を調整するフィクサーではないかと目されているのが何度もこのブログに登場する秋山直紀だ。外務省所管の「日米平和・文化交流協会」の理事という肩書だが、常勤理事はこの人しかおらず、実質、秋山を中心として運営されている。
理事に名を連ねる顔ぶれがこの団体の性格を物語る。
元防衛庁長官6人を含む防衛族議員、防衛事務次官らの官僚、三菱重工、川崎重工、石川島播磨重工業、日立製作所、伊藤忠商事など産業界の幹部たち、そして米国側からはコーエン元米国防長官、シュナイダー元国防長官特別顧問、シンクタンク「ヘリテージ財団」のトップら。
もちろん額賀福志郎、石破茂、中谷元、前原誠司、米津佳彦山田洋行社長の名前もある。
いわば、莫大な防衛利権を分け合う日米の「談合組織」のようにみえるのだが、いかがだろうか。これだけのメンバーが揃い、防衛に関する事業や利益を囲い込めば、何者も太刀打ちできないだろう。
久間が防衛大臣として訪米したさい、同行して米国側の関係者と精力的に商談めいたことをしていたという秋山の真の役割は何か。そして守屋はもちろん、額賀、久間ら政治家との関係は・・・。
額賀は過去二度にわたって防衛庁長官をつとめ、防衛庁調達実施本部背任事件や防衛施設庁官製談合事件を経験し、そのたびに組織の抜本的改革を国民に約束した。しかし、省内はますます腐敗が進み、「天皇」と呼ばれるほど増長を許した守屋によって、そのあきれるほどの実態が明るみに出た。
日本の防衛に影響力のある政治家として額賀の責任は重い。守屋への捜査が本格化し、検察から事情聴取を受けるようなことがあったときはすべての真実を明らかにし、防衛行政を根本的に立て直してもらいたい。
(文中敬称略)
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