労災保険料を食いつぶす独法、労災病院
働く人や企業が負担しなければいけない厚生年金、雇用保険、労災保険の保険料。それらを集めた巨額の特別会計から、カネを支出させ無駄遣いをしている官僚天下り法人がゴロゴロしているのは、毎度の報道でうんざりするほど分かっている。
かつて悪名をはせた年金の「グリーンピア」とか、まだ閉鎖が決まっていない雇用保険の「私のしごと館」などが有名どころだが、労災保険を食いつぶしている全国33か所の労災病院も、相当な放漫経営ぶりである。
労災保険は全額、企業が負担するものだが、事業の種類によって保険料率が異なる。たとえば年間1億円の賃金総額を支払っている企業は最低でも45万円、危険度の高い業種によっては1180万円もの保険料を支払わねばならない。だから、労働保険特別会計労災勘定は、1兆5000億円前後の予算規模となっている。
渡辺喜美行革相は独法合理化の一環として、労災病院を運営する独立行政法人「労働者健康福祉機構」を「国立病院機構」へ移管することを厚労省に提案している。
労働者健康福祉機構は平成18年度、特別会計から運営費交付金と補助金あわせて425億円を受けているが、繰越欠損が240億円にものぼっている。かつて、特殊法人だったころに1兆円をこえる欠損があったのを3年前、独法への組織変更にともなって国が穴埋めし、ゼロにしてもらった。
ところがわずか3年間で再び240億円もの累積赤字を抱え込んだ。これはもう、この組織そのものに何らかの欠陥があるとしか思えない。
一方、146の国立病院を統括運営する「国立病院機構」は、同じく独立行政法人だが、労災病院との大きな違いは補助金を一般会計から支出していることだ。
平成18年度は一般会計より589億円の財政支出を受け、純利益90億円、利益剰余金77億円というから、労災病院に比べ、かなりましである。やはり一般会計だと、国会のチェックもあり、いい加減なことはできないということだろう。
国立病院に労災病院が統合され、管理部門が合理化できれば、労災の特別会計から相当まとまった「埋蔵金」を見つけることができるに違いない。
渡辺行革相は「労災病院は、本来の労災対策関連が5%くらいで、あとは普通の病院と同じ。労災保険からお金がふんだんに出てくるから、大体の病院は赤字垂れ流し状態になっている。結局、労災保険が高すぎるんじゃないか」と憤る。
いま、この国では「医療崩壊」といわれる現象が起きている。負担やリスクの大きい医療現場から医師が去り、医療民事訴訟を恐れる産婦人科や小児科医の不足が目立っている。救急医療体制の不備や、当直医に課せられる過酷な勤務実態がマスコミ等によって明らかになっている。
そんななかで、国立病院や労災病院など地域の中核となる医療施設の役割は従来に増して大きい。まずは、特別会計という伏魔殿の奥深くに隠されている貴重な財源を、一般会計という明るい場所に引き出すこと。そして、無駄な出費をやめ、勤務医や看護師の労働条件の改善など、国民に分かる本来の目的におカネを使うことが大切だ。
高額な医療機器、診療報酬の減少、医師の偏在、救急医療部門の赤字と過重労働などにより、総合病院の経営がきわめて難しいのは事実だ。とくに地方において、その傾向は著しい。国立病院や労災病院は、そうした「医療崩壊」を防ぐ砦であり、民間に病院経営の模範を示すべき存在であることを自覚してほしい。


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