一転、谷内外務次官勇退へ、伏魔殿の今後は?
かつて田中真紀子外相が「伏魔殿」と呼んだ外務省は、谷内正太郎が事務次官であり続けたこの3年間、それまでのゴタゴタがウソのように安定感を保っていた。
麻生太郎に「昼行灯」といわせるキャラクターとは裏腹に、国益のためなら「凜とした外交」を崩そうとしない、スジの通った谷内の姿勢は高く評価されている。
来年1月に迫った外務省事務次官の人事で、27日、珍しいドンデン返しがあった。
定年延長で63歳という年齢、来年1月4日で在任まる3年。普通なら谷内はスンナリお役御免となるところだ。ところが、今回は外務省と官邸との間で調整が難航した。
来年7月に北海道洞爺湖サミットをひかえていることや、不安定な政局から、官邸は谷内をもうしばらく温存するハラを固め、いったんは決まったかにみえた。
MSN産経ニュースなどは、27日朝、「政府は来年1月予定の外務省事務次官人事について先送り方針を決めた」と速報した。ところがその日の午後になって、みごとに中身が覆った。谷内は来年1月に勇退し、後任に、藪中三十二外務審議官が起用されることになったのである。
谷内は内閣府副長官補だった04年12月、拉致被害者の家族に北朝鮮の再調査内容を説明したさい「証拠はすべてでっち上げ。すべての被害者を返すよう求める決意だ」と厳しく批判した。韓国が占拠している竹島問題でも、外務事務次官自らソウルに乗り込んで話し合いのテーブルにつくことを約束させた。弱腰の目立つ外務官僚のなかでひときわ目立つ存在であった。
政府がいったん決めた留任人事がなぜ変更されたのか。実は、谷内自身が固辞したというのである。4年余りつとめた元防衛事務次官、守屋武昌の悪い先例もあり、3年をこえないうちに後進に道を譲るのだという。
「外交方針が異なる福田首相の下で働くことに、違和感があったのでは」との見方もあるが、それは穿ち過ぎというものだろう。谷内は早稲田大学で学究生活を始めることになっているという。事務次官という権力の座に恋々としない、まさに「昼行灯」の面目躍如である。
さて、屋台骨を支えてきた谷内のいなくなる外務省はどうなっていくのだろう。たとえ「昼行灯」でも点いていなければ、伏魔殿から怪しげな輩がゾロゾロ出てくる、などということはないように願いたい。
昨今は、防衛省にお株を取られているが、もともと何かと問題をかかえた役所である。最も悪質だったのは松尾克俊の事件だ。支出の内容を明らかにする必要がない機密費は外務省だけで年間50億円もある。松尾は要人外国訪問支援室長という立場を利用して、このカネを思うがままに流用した。彼の捻出するカネで、飲食、ゴルフ、女遊びに興じた外務官僚たちが多数いた。
難関の試験をパスして外務省に入った官僚たちは、庶民と違うスケールで仕事をしているがゆえに、「俺達が日本を背負っている」という傲慢な錯覚に陥りやすい。いわゆる特権意識である。
では、これから日本外交を託すことになった藪中三十二とはいかなる人物か。まず、経歴をみると、少しだけ変り種である。1969年、阪大を中退しノンキャリアで入省したが、翌年、上級試験を受けなおして合格し、晴れてキャリア官僚になっている。ガチガチのエリートというわけではない。それでも、その後の出世レースには順調に勝ち上がった。北朝鮮の拉致問題や6カ国協議にもかかわってきた。
「外務官僚の典型、傲慢不遜、出世欲のかたまりのような人物」という藪中評もあるが、誰でも、見る人によって評価が違ってあたりまえだ。まずはお手並み拝見というところだろう。
(敬称略)
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