9.11ペンタゴンの謎、国会で質疑
アメリカの9.11同時多発テロには、いくつかの「陰謀説」がある。日本でも、1月10日の参議院外交防衛委員会で、民主党、藤田幸久が事件への疑問を投げかけた。
9.11テロで最も謎が多いとされるのは、アメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)のケースである。2001年9月11日午前9時38分、乗客58名、乗員6名のアメリカン航空77便ボーイング757型機がほぼ水平に地面を滑走しながらペンタゴンに激突、炎上したとされる。
この事件について、藤田は資料写真を閣僚たちに配布して、疑問点を示した。その概要は以下の通りである。
「757型機は主翼の幅が38m、尾翼の高さが13.6mあるが、それが突っ込んだにしては破壊跡の幅や高さが小さいのはなぜか」
「厚い建物の壁に直径5メートルの穴を開けて貫通しているが、軽い素材を用いている飛行機に開けられる穴ではない」
「飛行機の残骸も、エンジンも、フライトレコーダーも見つかっていない」
もちろん、このナゾを日本政府に質問したところで、誰も答えられるわけはない。ペンタゴン発表を否定することなどできない。福田首相、居並ぶ閣僚、官僚たち、みんなただ写真をながめているだけだ。
藤田の質問のネタ元と思われるディラン・アヴェリー監督のドキュメンタリー映画「ルース・チェンジ」は、厚さ2.7mの鉄筋コンクリートの壁にきれいに直径5mの穴を開けられるのは、巡航ミサイルではないか、と指摘する。また、現場に、飛行機が地面を滑走した跡は残っていないという。
「ルース・チェンジ」は、「米政府と軍が、遠隔操作の貨物機やミサイル、建物内に仕掛けた爆薬を使ってツインタワーやペンタゴンを破壊し、テロ事件であると発表した」とする自作自演説を主張している。この事件で最も利益を享受できるのはブッシュ政権だという見方が背景にある。
ただし、藤田は自作自演説というわけではなく、新テロ特措法に反対する立場から、9.11の真相を今一度見直してみるべきだという議論を展開したかったのだろう。
振り返ってみると、事件当時の報道はNYの消防士たちの活躍や、行方の分からない家族を捜す人々を追った現場取材モノが中心だった。あとは警察発表にしたがってアルカイダメンバーの足跡をたどるレポートが記憶に残っている。多くの乗員乗客が亡くなった飛行機関係の情報が少なかったことのほか、日本のマスコミが、邦人行方不明者の留守家族を、いつものような熱心さで取材しなかったのが不思議な点だった。
しかし、いま考えてみると、それだけ日本人情報については、入手困難だったということだろう。事件当時、邦人に関する情報収集は、在NY日本総領事館が拠点になった。貿易センタービルに入居している全企業の邦人勤務者を総領事館やマスコミ各社が独自に洗い出す作業を進めるのは、あの混乱状態の中ではとうてい無理なことだった。
つまりは、あの大混乱のなかで、締め切りに間に合わせなくてはならない取材者が頼りにしたのは、アメリカ政府筋やニューヨーク市、現地警察や消防からの情報と、米メディアのニュースしかなかったということである。
日本側の取材網としては、大手新聞やテレビ各社のNY支局があるが、いずれも支局長ほか数名ていどの小さな所帯である。日本の本社から派遣する記者の数も限られるし、言葉の問題もある。日本国内で起きた大事件のように総動員体制の取材ではないから、十分知りたいことが伝わってこなかったということもある。
そういう状況で長い時間が経過し、いつしか関心が対テロ戦争に移っていった。十分な検証もなしに既成事実化したものもあっただろう。
ところで、藤田の質問に対する政府の答弁によると、9.11で亡くなった日本人は計24人。うち遺体が発見されたのは13人、裁判所が死亡宣告したのが11人だという。
そのなかには、世界貿易センターに突入したアメリカン航空11便の日本人搭乗者一人と、ペンシルバニア州シャンクスヴィルに墜落したユナイテッド航空93便の日本人大学生一人が含まれる。
24人の犠牲者リストが確定するまでには、事件発生からかなりの期間を要したと考えられる。捜索、DNA鑑定など難航をきわめたことは想像に難くない。
日本政府は犠牲者の家族に対し「事件以来、補償金の報告、火葬の支援、毎年貿易センタービル跡地でおこなわれるセレモニーへの出席支援など、緊密に連絡をとっている」と藤田の質問に答えた。
2003年10月に家族が書いた文章がある。「遅々として進まない行方不明者の鑑定作業も気に掛かる。メディカルエギザミナーの主任技師は、最新の技術をもってしても、すべての検体の鑑定が終了する迄にはまだ18か月を要すると言う。(中略)隣接するメモリアルパークには鑑定を待つ一万五千余の検体が冷蔵保存されている。待とう。2005年まで待とう。そう覚悟をきめた」。
貿易センタービルで行方不明になったままのご子息を案じる父の心情。そして「一万五千余の検体」という荒涼とした言葉が、胸を衝く。
憎むべきあの犯罪は、本当にアルカイダの仕業なのか。事件の直前、ドバイの病院に入院したウサマ・ビンラディンを米CIA長官が見舞ったという「ルース・チェンジ」のコメントは本当なのか。
ビンラディンやアルカイダはもともとアメリカが反ソ戦略の一環として育て上げたテロ組織である。
陰謀論に組するわけではないが、「不条理」に命を奪われた人々を悼み、家族の悲痛な心情を思うなら、「ルース・チェンジ」の投げかける数々の疑問に米政府はきちんと答えるべきである。
(敬称略)
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