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2008年1月11日 (金)

バラック・オバマ「大地の声」はアメリカを変えられるか

「珍しい名前のやせた男」が3万5000人に呼びかけた。2004年、米国民主党大会。男の名は当時、上院議員候補だったバラック・オバマ。

「黒人のアメリカも、白人のアメリカも、ラテン系アメリカ人のアメリカも、アジア系アメリカ人のアメリカも存在しない。ここにあるのは、アメリカ合衆国なのです。この事実こそアメリカ国民に与えられたすばらしい恩恵なのです」

心地よい響きを持つ力強い言葉が、会場を包んだ。その声は、メディアを通じて全米に流れた。初めて、この男の存在が広い国の隅々にまで伝えられた瞬間だった。

彼はその後、上院議員となり、4年の時を経て、民主党の大統領候補の一人として予備選挙を戦っている。アイオワ州党員集会における勝利で旋風を巻き起こし、ニューハンプシャー州では危機感を強めたヒラリー・クリントンと激しいつばぜり合いの末に敗れたが、「変革」を求める国民の、彼に寄せる期待の高まりは、アメリカの地殻変動を予感させる。

オバマはケニア人の父と、カンザス州で育った母との間に生まれた。父はハーバード大学を卒業すると、ケニアに帰国した。母国への貢献を責務と考えたからだった。幼かったオバマは母と祖父母に育てられた。物心がつき、写真でしか父のことを知るすべのないオバマに、祖母は「お父さんの優れた頭脳をあなたは受け継いでいるのよ」と励ましたという。

1981年、ニューヨークのコロンビア大学に入って政治学を学び、2年後に卒業した。そのころ、ケニアから知らせが届いた。父が交通事故で亡くなったというのだ。10歳のとき、父は一度だけ訪ねてきた。「お前には期待してるからな」とひと言だけ残して去っていった。それっきりだった。

オバマは知らせを受けたものの、父の死を実感できなかった。だが、しだいに父のことをもっと知りたいと思うようになった。それは、自分を知ることににもつながる。

父の母校、ハーバード大学ロースクールへの進学を決め、その前にオバマはケニアへ向かう決心をした。父との間の、長く遠い心の空白を埋めるため。そして、自分の体に流れる血の源流をたどるための旅でもあった。

ケニアで彼が父について知ったのは、父が経済の専門家として政府で働いていたということ。腐敗した役人を批判したのがもとで、失脚したことだった。ケニアの祖母や腹違いの兄弟にも会った。そして、父の墓に向かった。涙を抑えることなどできなかった。父は自分を捨てたわけではない。この、ケニアの人々のために身をささげたのだ。

自分はどういう人間なのか。アメリカで何をすべきなのか。自問自答し続けていた彼に、アフリカの大地は優しく語りかけてくれた。「君ならできる。アメリカという国のため、世界のため、人々の希望のために働くことが」。

もう、オバマに迷いはなかった。ハーバード大学ロースクール卒業後、人権派弁護士として頭角を現し、貧困層救済の草の根社会活動を推進した。97年にはイリノイ州議会上院議員に選ばれ、政界に進出、04年にイリノイ州選出の上院議員に初当選した。

そして、いつの間にか大統領候補として推す声が地元の議員やマスコミなどから出はじめた。

07年2月、イリノイ州スプリングフィールドで正式に立候補宣言をし、「建国当初のフロンティア精神」への回帰を呼びかけた。アメリカのグローバル資本主義には懐疑的である。イラク戦争には反対の立場を明らかにしている。

彼の魅力は「人の胸に響く言葉の力」だ。そこから滲み出す包容力が、アイオワでの大勝利を呼び込んだ。

アメリカ合衆国建国以来初めて、アフリカ系アメリカ人の大統領が誕生することも夢ではない。いや、アフリカ系というのはマスコミ的分類にすぎない。父方のケニア・ルオ族と、母方のスコットランド、アイリッシュ、チェロキー・インディアンの血が混じりあった、すなわち「多民族の混血」と言い換えたほうがよいのだろう。外見が、アフリカ系に見えるだけのことだ。

いずれにせよ、独善的になりがちなこの国の「自由と民主主義」を、真の意味でのヒューマニズムで救う。そういう政治家が大統領になれば、アメリカへの世界の信頼度は増すにちがいない。オバマがそういう存在になれるかどうか。

アフリカの大地が教えてくれた、優しく豊かな心と、奉仕への揺るがぬ信念。それを持っている限り、アメリカ、いや世界は、彼の声に共鳴し続けるだろう。

                             (敬称略)

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