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2008年2月23日 (土)

「誇り」が「驕り」になっていないか、イージス艦の諸君

国のために体を張っている。日の丸を掲げて、海外に赴き、国際貢献をしている。自衛隊員のプライドはかつてとは比べものにならないほど高くなった。人は誰しも、勘違いしやすいものである。「誇り」が「驕り」に変化するとき、事件は起こる。

日米同盟の象徴、イージス艦。その最新鋭艦「あたご」は昨年十二月、米ハワイ・カウアイ島沖で迎撃ミサイルの試射をおこなった。米軍の協力で発射された標的の模擬弾は、大気圏外で撃ち落とされ、実験は成功した。

重要な任務を終え、「あたご」は帰途についた。19日未明、久しぶりの母港、横須賀を目前にした海は月明かりに映えて静かにまどろんでいた。見張り番の隊員の目にも、当直士官の目にも、かなたに見える漁船の光は、平和な日本の営みとしか映っていなかったかもしれない。そこに危険が迫っているなどとはつゆほども感じていなかったのではないか。

米軍の国際軍事戦略に組み入れられ、大きな脅威との戦いを意識せざるを得なくなった隊員たちの頭脳に、平和な海で操業する小さな漁船の人命への想像力が果たして働いていただろうか。「あたご」は自動操舵を手動に切り替えることもなく、直進を続けた。その接近を避けるため、数隻の漁船が必死になって舵を切っていたことなど知るよしもない。

午前3時55分。「あたご」は漁船の赤い灯りを確認しながらも、直進を続けた。漁船「清徳丸」が間近に迫ったとき、あわてて手動操舵に切り替え、舵を切ったが間に合わず、午前4時7分、「清徳丸」と衝突した。その1分後に救助命令が出され、救助艇を下ろす作業が開始された。

艦長は救助艇で素早く救出できると考えたのだろうか。いや、何としてもそうしたかっただろう。が、救助作業は、はかどらない。ここで初めて重大な事態の発生を認識したのかもしれない。漁船の乗組員に万が一のことがあったら大変なことになる・・・。

午前4時23分、ようやく無線で海上保安庁に事故の一報を連絡する。「漁船と衝突したが、無事救助した」と防衛省に連絡できる状況をつくりたかった。だから、この時点ではまだ海保にしか通報していない。

結局、横須賀の護衛艦隊司令部に連絡が入ったのは午前4時40分のことだった。4時45分、護衛艦隊司令部から横須賀の自衛艦隊司令部に連絡。そこから統幕と海幕のオペレーションルームに情報が入り、吉川栄治海上幕僚長に伝わったのはその後だった。しかし、吉川は少なくとも5時前には自宅で電話連絡を受けていたと思われる。

事件を知った吉川は、内局、そして石破大臣への連絡をためらったに違いない。海幕の当直に「とにかく早く漁船の乗組員を救い出せ」と指示し、時計の針を見た。平成18年8月に吉川が海上幕僚長になって以来、イージス艦情報漏えい事件、補給艦のインド洋での給油量訂正問題、護衛艦しらねの火災など、不祥事やトラブルが相次いでいる。ここで重大事故が起きれば首が飛ぶだろう。しかし、時間は刻々と過ぎてゆく。結局、石破防衛相に事故の連絡があったのは5時38分、政府が情報連絡室を設置したのは5時55分であった。

このブログを書いている時点で、まだ漁船に乗っていた親子は発見されていない。家族や仲間の悲嘆ははかりしれない。

この、政府首脳への連絡の遅れが吉川の命取りになった。更迭されることになった吉川はいま何を考えているだろう。「庁」から「省」に格上げされたとたん、知らず知らず防衛省を蝕んでいた病根が表面にあらわれてきた。守屋前次官に象徴される内局の腐敗が現場の士気を低下させたことも事実なのだ。

1991年の湾岸戦争以降、自衛隊は「国際平和協力活動」の美名のもと、アメリカ軍に協力するため海外遠征する組織に変質している。

米軍との連携を強める自衛隊がイージス艦の軍事機密にナーバスであるのはわかるが、記者発表内容が二転三転したり、何ごとにつけ「調査中でございます」「現段階ではお答えできません」では国民からの信頼は地に堕ちるだろう。

事故当時、イージス艦に何人が乗船していたのか、汽笛を鳴らしたのか、レーダーを近距離用に切り替えていたのか。そんなことすら明らかにしようとしない。

「隊」が「軍」になっていく姿がそこにあるのだろうか。日米同盟や安全保障は国民一人ひとりの生命にかかわる問題なのである。

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