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2008年2月25日 (月)

「道路公団民営化は失敗だった」構想日本・加藤代表が国会で公述

「道路公団民営化は失敗だった」。22日の衆院予算委公聴会で、シンクタンク「構想日本」代表、加藤秀樹は公述人として、そう断言した。

道路公団との戦いに勝利して、民営化を勝ち取ったという思いの強い猪瀬直樹は、国会という舞台における加藤の発言をどう受け取ったであろうか。

猪瀬は著書「道路の権力」のなかで、表の「民営化委員会」に対する「影の委員会」(シャドー・コミッティ)を主導していた加藤を強く批判している。「審議を混乱させられた」「加藤は公団ファミリー企業の増殖について言及を避けている」などという記述がある。

しかし、猪瀬の思いとは裏腹に、59兆円を道路建設に注ぎこむ国交省の10ヵ年計画を見る限り、「民営化」とはいったい何だったのか、と思わざるを得ない。

加藤は言う。そもそも何のために民営化することにしたのか。これ以上道路をつくらなくてすむ仕組みをつくるのが目的だったはずだ。

そのためには、国ではなく、民営化会社が高速道路をつくるというルールを確立しなければならなかった。ところが、民営化こそ実現したものの、民営化会社には道路建設の意思決定権すら与えられていないのである。

わが国ではずっと「国幹審」という国交相の諮問機関が意思決定をおこなってきた。現在は「国幹会議」という名称に変更されたが、国会議員10人、学識経験者10人で構成されるその実態は全く同じだ。あいかわらず、道路建設の実質的な決定権を握っている。

加藤は、この「国幹会議」に根本的な問題がある、と指摘する。公的なものである道路を、公的な体裁を持つ「国幹会議」で審議するというのは、一見公平公正なプロセスにみえる。ところが、ともすれば私的な利害の絡んだものになり、公益性に乏しい道路がつくられる温床となる。

意思決定は「国幹会議」。そして、建設資金は道路特定財源を使って国と地方自治体が手当する「新直轄方式」。これにより、国交省は公団を管理運営を中心とした株式会社につくり変える一方で、いつまでも高速道路を建設し続ける仕組みを温存した。

「新直轄方式」とは事業費の3/4を国が、残り1/4を地方が負担するのが建て前だが、自動車重量税の地方譲与分を重点配分すれば、地方の負担は実質ゼロとなる。有力政治家の地元には総務省が地方交付税を増額する例もあることは、すでにこのブログでもふれた。

民営化会社をマーケットに放り込んで、政官業の利権の及ばないものにするという、当初のもくろみはこうして崩された。

「高速道路は従来、9割が税金でつくられ、薄皮一枚分を公団が借金してつくってきた。新直轄は道路特定財源を使って道路をより建設しやすくする仕組みです。しかも、特定財源と借金が入り混じり、おカネの流れがわかりにくくなっている」

加藤は元大蔵省官僚である。彼が1996年、47歳で大蔵省を飛び出し、慶応大教授に転身したときはほんとうに驚いた。学生時代のおとなしい印象からは想像できない思い切った決断だった。

加藤は「道路高密度国家であるこの国に、もはや道路特定財源を維持する理由はない」と主張する。その背景には、「役所が作る統計はウソではないけど本当でもないことが多い」という経験則がある。観点によって、さまざまな統計数字を出すことができる。そのうち都合のいいデータを示して説得するのが官僚の常套手段だ。

もちろん、何かというと「開かずの踏み切り対策」を持ち出す国交省官僚の説明にも懐疑的である。
「そういうところにはカネがまわらないのが実態だ。これまでそこにカネを使ってきたかということを考えなければならない」

一方、猪瀬直樹は道路特定財源について、民主党案にも国交省案にも組していないようだ。東京都の副知事という立場もあろう。日経BPネットに寄せた彼の記事には次のような記述がある。

「道路公団民営化委員会で、僕は一つひとつの高速道路について、さまざまな数字を出した。(中略)こうした作業を積み重ね、高速道路にかかるはずだった20兆円を10兆円にまで圧縮することを可能にした。しかし、その当時の努力がすっかり忘れ去られ、ばらまきは野放図に復活しかけている」

猪瀬の正直な心境がうかがえる。道路利権の闇は広くて深い。同じ民営化でも、郵政とは比べものにならない困難さがつきまとう。盟友、石井宏基が暗殺されたあと、命の危険を感じ、小泉首相に直訴して専用車をつけてもらったこともある。民営化委員会は分裂し、気がつけば大宅映子と二人だけになった。

1000日に及ぶ攻防。結果的に、その血のにじむような努力が、いま報われているとは思えない。しかし「民営化は失敗」という加藤にしても、猪瀬だから公団を解体できたということについては否定できないだろう。

猪瀬も加藤も、志は共通しているはずである。「霞ヶ関」の支配構造をぶっ壊して新しい「日本のかたち」をつくってもらいたい。

                            (敬称略)

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