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2008年3月 2日 (日)

イージス艦事故 海保無視の心理構造

「軍艦が一般の船舶と同じに扱われている。単なる交通事故扱いで、軍らしい扱いを受けていない(中略)誇らしい自国の軍隊ではなくどうせガードマンだという自衛隊軽視の戦後特有の感情が今も災いしている」

西尾幹二がイージス艦衝突事故について、産経新聞紙上に発表した一文である。これを読んだとき、ひょっとしたら海上自衛隊、とくに防衛大を出た幹部隊員にこのような感覚の持ち主は多いのではないかと感じた。

西尾といえば、もともとニーチェ研究で知られるドイツ文学者である。昨今では「新しい歴史教科書をつくる会」の活動などを通じた「自虐史観」批判で知られている。歴史家でも、軍事専門家でもない。過激な言論で知られる保守系文化人とでもいえようか。

さて、当ブログでは2月23日、イージス艦衝突事故についてふれた。国際貢献や米軍との連携強化による自衛隊の「誇り」が「驕り」となり、帰港間近の安堵感も相俟って、小さな漁船の一つ一つにまで目が行き届かない心理状況にあったのではないか。そういうことを書いたつもりである。

防衛大でどのような教育がおこなわれているかよく知らないが、普通の大学と違うのは「軍事学」を学んでいるということだ。おのずから、一般人と考えは異なるだろう。

事故当日の2月19日、漁船との衝突から約4時間後の午前8時2分、横須賀地方総監部から護衛艦隊司令部の幕僚長を乗せたヘリコプターが離陸した。司令部の幹部3人も同行した。30分後、ヘリはイージス艦「あたご」に到着した。幕僚長は艦長や、衝突寸前まで当直責任者だった航海長から話を聞いた。

このとき、事故捜査に当たる海上保安庁の許可は受けていない。海自側は電話連絡したというが、確認されていない。明らかに、海保を見下した態度である。そして「艦船は特別である」という確信犯的な共通心理が見て取れる。海上幕僚監部に概要を説明すると、「事情の分かっている者をよこせ」と指示があった。これについては、吉川海上幕僚長が指示した、と石破防衛相は繰りかえし主張している。しかし「実は石破が呼んだ」と報じるメディアが多い。防衛省幹部からの取材が根拠となっているが、これも怪しいと思ったほうがいい。

そして、最も問題視されるのが、これまた海上保安庁に無断で、「重要参考人」である航海長をヘリに乗せ、市谷の海上幕僚監部に運んだことだ。午前9時10分に出発し、市谷には9時45分に到着した。

そのころ、石破大臣は9時20分から10時前まで記者会見にのぞみ、その後、衆院予算委員会に出席。正午前に、「航海長を呼んでいます」というメモを受けとった。

航海長は市谷に到着しだい、海上幕僚長らの事情聴取を受けたあと、正午過ぎから大臣室で、石破や増田事務次官、海幕幹部らと会っている。

結局、海上保安庁へ「航海長を下船させた」と正式に連絡したのは19日午後1時40分のことだった。

午前10時前から午後1時ごろにかけて、防衛省内で何が話し合われたのか。野党やマスコミからは、組織の利益を守るために、証拠隠滅や口裏合わせが行われたのではないかと勘ぐられている。

ここで話を冒頭の西尾幹二の自衛隊論に戻そう。国家のために、はるかインド洋上まで出かけ、テロとの戦いのために困難な給油活動を続けている海上自衛隊が、なぜ、民間の船のように、海上保安庁の取調べを受ける屈辱を味わわなければならないのか。こうした西尾風の心理が深層にあるとすれば、人命にかかわる重大事故を起こしておきながら、海保を徹底的に無視して、身内の調査を優先した防衛省の、傲慢きわまりない行動は、よりわかりやすくなる。

「ガードマン」を「軍隊」にしつつあるこの国の政治の趨勢が、防衛省内部の意識分裂を引き起こし、バラバラに分解させ始めている。「庁」が「省」に看板だけ付け替えられても、真の意味の「誇り」を持てず、あげくの果てに「人命の重さ」にさえ鈍感な隊員をつくり出してしまった。

                           (敬称略)

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コメント

あたご衝突による刑事裁判の経過からも、如何に自衛官に対する偏見が報道の根底になっていることか。
また、海上保安庁の証拠隠滅に対する報道の少なさからも、官僚とマスコミの癒着は明白になってきた。

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