« さっぱりわからぬ日経新聞岡部主幹の日銀総裁像 | トップページ | 人々の欲望に翻弄される運慶「木造大日如来座像」 »

2008年3月25日 (火)

過剰道路の補修予算不足でやがて日本は荒廃する

昨年8月、米ミネソタ州ミネアポリスで築40年の高速道路橋が何の前ぶれもなく崩落し、多くの死傷者を出した。

そのころ、日本の国土交通省道路局は道路建設中期計画策定の大詰めをむかえていた。

「道路にも寿命がある」。道路局の官僚たちは理屈ではわかっていた。現に、道路橋梁の部材などに疲労による亀裂や傷が各地で報告されている。しかし、大地震が起きたわけでもないのに、大きな橋が現実に崩れ落ちたことに少なからずショックを受けたはずだ。

アメリカでは1930年代のニューディール政策で建設されたおびただしい道路構造物の高齢化が進み、1980年代、パット・チョート博士の著書「荒廃するアメリカ」が世に出て、その恐怖が一般に認識された。2004年時点で米国内の欠陥橋梁の数は約17万橋にのぼり、いまも状況は変わらない。

日本の場合、アメリカより30年遅れで道路建設が本格化し、経済の高度成長とともに、爆発的に増加した。現在、65万の道路橋があり、そのうち8,900が完成から50年を経過している。首都高速や阪神高速もすでに40年をこえる老朽高架道である。

そして、現実に85か所の橋は通行が禁止され、684か所で通行規制がおこなわれている。そうした危険な場所は、これからどんどん増えていくだろう。本来は、新規道路建設より、首都高速など交通量の多い老朽道路の補修から手をつけていかなければならない。

橋梁やトンネルなど道路構造物は、建設一辺倒から、補修・更新時代に移りつつある。それは、平成15年に国交省企画専門官、岩崎信義が出したレポートで指摘されていた。

ところが、国交省はその実情を分かったうえで、14000kmに及ぶ高速道路ネットワークの完成を至上命題と考えているのである。

「あと10年が限度だ。その間に14000kmをやらなければ」。ミネアポリスの事故を知り、道路官僚たちはなおさらその思いを強くしたに違いない。もし日本で崩落事故が起こり、道路の老朽化が社会問題になれば、道路の補修や更新をなにより優先しなければならなくなる。

今後10年間の道路建設中期計画に、昨年秋の素案段階で65兆円プラス関連費3兆円という途方もない予算を盛り込んだのは、「時間との戦い」を意識したからではないだろうか。

この問題に関連した質疑が今月21日の参院予算委で、繰り広げられた。

民主党の平野達男は「道路を含む社会資本が過剰にたまっている。今後のGDPの伸びを考えると、新規投資を抑え、既存施設を使うよう発想の転換が必要ではないか」と政府の考えをただした。

これについて、大田弘子経済相は「社会資本のストックは2003年で700兆円にものぼっている。かりに現状水準の投資可能額が今後も保たれるとして、2030年には維持管理更新費だけで投資可能額の65%を占めるという厳しい見通しだ」と説明。そのうえで「新規投資は必要不可欠なものに集中させるべきだ」という見解を述べた。

また、今後の国の投資可能額について、国交省は「横ばい」か「年に3%ずつ減少」の二つのケースを想定して試算、マイナス3%の場合は2020年代にいたって補修や更新のおカネが不足するという結果をはじき出している。

将来の人口減少を考えるなら、投資可能額は減ると考えるのが妥当だろう。

だとすれば、国交省はこう考えていることにならないか。59兆円を使って、今後10年間の新規道路建設は絶対にやり遂げたい。しかし、その後は予算不足で道路の補修が十分できない可能性がある。

これは、どういうことだろう。造るだけつくっておカネが足りなくなったら、仕方ないからほったらかしなのだろうか。冬柴国交相の「中期計画は考えに考え抜いたものだ」という国会答弁をよくおぼえておいてほしい。真に将来の国土を考えた計画とはとても思えない。

もし、あちこちの危険な道路、いつ崩れるかもしれない建造物が人々に知らされないまま使用され、10年後にコンクリートクライシスにおびえる生活が始まるとしたら、冬柴国交相は歴史に残る犯罪的政治家と評価されるだろう。

「荒廃する日本」がそう遠くない未来で待ち構えているかもしれないのである。

                       (敬称略)

« さっぱりわからぬ日経新聞岡部主幹の日銀総裁像 | トップページ | 人々の欲望に翻弄される運慶「木造大日如来座像」 »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/335692/11772841

この記事へのトラックバック一覧です: 過剰道路の補修予算不足でやがて日本は荒廃する:

« さっぱりわからぬ日経新聞岡部主幹の日銀総裁像 | トップページ | 人々の欲望に翻弄される運慶「木造大日如来座像」 »

フォト

1日1回応援クリックお願いします↓

過去の全ての記事

2016年6月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

microad

無料ブログはココログ