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2008年3月22日 (土)

永田町的妥協を民主に押しつける三紙社説の画一性

日本の新聞人の頭の構造は、基本的にだいたい同じだということがよくわかる。

福田首相が道路特定財源の一般財源化を柱とする方針を示したのを受けて、今日の朝日、読売、日経の各紙は道路特定財源とガソリン暫定税率をテーマに取り上げている。結論はそろって「民主党は修正協議に応じよ」である。あまりにも無難で似通った内容に、愕然とした。各紙の主張をかいつまんでみる。

まず、渡邊恒雄主筆率いる読売新聞。
「与党がまとめた法案修正の基本方針は、協議のたたき台として、十分検討対象になるものだ。このまま期限が切れれば、ガソリン価格が乱高下するなど、国民生活は大きく混乱する。」
ここはナベツネ王朝になって以来、“自民党の機関紙”のようなものだから、こんなところだろう。

つぎに、“財界の機関紙”とあえて言わせてもらう、日経新聞。「自民党が民主党に協議機関の設置を申し入れたのに対し、民主党は暫定税率を廃止しない限り応じない構えだ。衆参両院議長のあっせんによる合意をほごにせず早く協議に入り成案をまとめるべきである。」

では、最後に“弱者の味方”を気取るエリート丸出し集団、朝日はどうか。「暫定税率は維持するしかない。道路特定財源は廃止し、一般財源にすべきだ。民主党は暫定税率を撤廃させて福田政権を追い込む、といった態度は慎むことだ。与野党は修正協議のテーブルに着くべきだ」

つまり、各紙がそろって言いたいのは「民主党は暫定税率廃止の御旗を降ろして、与党と道路特定財源の修正協議をやりなさい」ということ。なぜ、暫定税率維持なのかというと、「ガソリン価格の乱高下や来年度予算への支障を避けるためだ」という。

本質論はさておき修正協議を、という考え方は「足して二で割る」式の旧来型永田町論理であり、抜本的改革には到底つながらない。

そもそも、社説がなぜつまらないのか。大阪府の知事がよく口にする「机上の空論」の世界で、いわば「官僚答弁」のような、ホンネを隠した当たり障りのないものばかりだからである。

よく考えていただきたい。福田首相があたかも政策の大転換をして、道路特定財源を一般財源化する方向に舵を切ったかのように書いてあるが、そんなことを本気で信じている人がどれだけいるだろうか。「2009年度の税制の抜本改革にあわせ、一般財源化に向けて見直す」と言っているだけなのだ。事態打開に向けて苦し紛れに出してきたとしか思えない。

朝日はいちおう核心をチラリと指摘している。「一般財源化には自民党の道路族から強力な抵抗がある。指導力を売り物にしていた小泉元首相でさえ断念したいわくつきの難題なのだ 」

その通り、道路利権に巣食う政官業一体の「道路マフィア」が、福田首相の方針転換をこっぱ微塵に打ち砕くことは目に見えているのだ。ならば、なぜ朝日は方針転換の非現実性を指摘しないのか。

福田内閣は、小泉・安倍改革の流れを断ち切ることを狙い、道路族が片棒を担いだ政権である。だから、古賀誠氏は自民党議員の“生殺与奪の権”を握る選対委員長の座に就いた。古賀氏に逆らうことは、極端に言えば選挙において、お国替えや公認取り消しというリスクさえ覚悟せねばならないのである。

自民党政治の政策決定は、党の部会の了承と、党の機関決定を取りつけることが何よりも重要だ。それさえ通過すれば、まず間違いなく閣議決定される仕組みになっている。族議員の大ボスが、場合によっては総理大臣よりも力を発揮するゆえんである。道路族を抑え込む力が福田首相にあるとは思えない。

そのような党内事情を熟知している民主党に「道路の一般財源化をするから協議しよう」と持ちかけても、「空手形」になりそうな話にそうやすやすと応じるはずはない。

政府のハラは分かっている。とりあえず、「一般財源化」をエサに、両党のメンツがたつようなカタチで4月1日のガソリン値下げを回避する。そこから先は、なんとか恰好をつければいい。洞爺湖サミットなど重要な日程をこなしたあと、ゆっくりと「一般財源化」の党内論議にとりかかる。激しい道路族の抵抗はむしろ好都合だ。がんばって道路族を説得するポーズを取り続け、例えば「○年後に一般財源化」などと、いつもの骨抜きの妥協案を野党に提示する。そんなところだろう。

自民党が政権をとり続ける限り、道路の呪縛から逃れるのは難しい。新聞社の論説委員も十分承知していながら、社説にはああいいう書き方をする。これが、読者減少時代のし烈な部数競争のなかで、生き残らねばならない大マスコミの現実であり、限界なのだろうか。客観性の名を借りた、どっちつかずの性癖がどの社にもこびりついている。

いかにも、「ねじれ国会」が政治の正常な運営を妨げているといわんばかりの議論がある。しかし、この政治状況だからこそ、自民党の数にまかせた独断的な強行採決に歯止めがかかり、道路財源に関する数々の問題点が野党議員によって暴き出されたのだ。健全な二大政党制に移っていくための揺籃期と、なぜ捉えられないのか。

大マスコミはあるときは改革を主張し、変化による混乱が起きようとすると、それを阻止にかかる。改革には混乱もついてくるものだろう。その場その場のご都合主義から脱却し、長期的視点で天下国家を論じなければならない。

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コメント

内容を読んで嬉しくなってしまいました。
新聞はじめ著名な方の論評を聞くにつれ情けなっていました。
痛みを伴わない改革なんてあるのでしょうか?
何をすべきか?何が大事かを議論することもなく妥協点を見つける協議に何の意味があるのか理解できません。
過去の歴史を見ても多くの改革は多大なる犠牲の元に成し遂げられてきたと思っている。
数十年にわたる道路行政である、改革には当然多くの混乱を招く事、理解できる。しかし時間をかけて丁寧に方法論を議論しても変わらないであろうし、寧ろ現状維持派が都合の良い動きを加速させるだけであろう。改革は多くの犠牲やコストが発生する。それを無駄とか痛みとかと言う声に置き換え本質を曲げてほしくない。
少なくとも第三者であるべき記者諸君は本質の部分では妥協を排し官僚政治を変える毅然とした姿勢をもって臨んでもらいたいと思う。
高齢化社会・後進国の追い上げ・資源のない我が国のエネルギー問題・環境問題・・余計な事に使う金はないのに・・・・世界が大きく変わろうとしている現在、現在の国力を維持できなくなれば、年金どころの騒ぎではない、その犠牲は今の若者にまで拡大する。
今の自民党には、耳触りの良い声は聞こえて来るが、本質の部分では変わろうとしていない。
自分たちが掌握している現組織やシステムの温存を図ろうとするのは当然であろうが・・・・。

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