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2008年3月20日 (木)

福田首相を追い込んだ民主の戦略

昨年11月の、大連立をめぐる党首会談以来、小沢代表の携帯電話に福田首相からのコールがしばしば入るようになった。福田は小沢のような融通のきかない男の操縦には長けている。政治家としては後輩だとはいえ、一国の総理に頼られたら小沢も悪い気はしない。

電話のやりとりのなかで、「武藤でいいんじゃないか」という感触を小沢から得ていた福田は、まさか日銀総裁ポストの「空席」という事態が起きるとは想像もしていなかったに違いない。これは、長く政権の座にあって、あきらかに「ねじれ国会」というものの実相を甘く考えていた証拠である。

逆に、民主党は参院における多数の威力をどう生かすか、徹底的にシミュレーションし、戦略を練った。

民主党が、究極の布石を打ち込んだのは2月29日のことだ。これは、小沢が福田からの電話に出なくなった時期と一致する。布石とは、参院に提出した「道路特定財源制度改革関連3法案」。政府・与党のいわゆる「日切れ法案」の対案である。

この法案は、政府の「日切れ法案」の内容をほぼ残しているところがミソだ。すなわち、民主党の主張するガソリン等の暫定税率は廃止し、道路特定財源の一般財源化をはかるということ以外、ほぼ政府案のままである。野党優位の参院では、この法案を通し、政府案を採決しないことが可能である。

実は、「日切れ法案」にはガソリン暫定税率よりも重大な内容が含まれている。オフショア市場の利子非課税措置だ。これが3月末で切れると、経済が大きな打撃をこうむるのである。

東京オフショア市場は外国の個人や企業から預金を受け入れ、海外向けに貸し出す仕組みで、預金の利子は非課税の優遇措置がとられている。この措置が期限切れとなり、利子に課税されると、市場規模50兆円以上といわれる資金の大部分が、国内から流れ出る恐れがあるのだ。金融当局が最も心配しているのがこれである。

民主党の対案には、このオフショア市場の利子非課税措置や、輸入牛肉やナフサの関税率低減措置などがちゃんと含まれている。

参院で、民主党の「日切れ法案」対案が可決され、政府案が採決されないままの場合、東京オフショア市場などの大混乱を避けるためには、衆院でも、民主党案を可決せざるを得なくなる。

これが、民主党に戦略上の大きなゆとりを与えたのである。経済的大混乱を引き起こさずに、4月からのガソリン価格値下げが実現する。ここから、与党と簡単に妥協する必要はない、という主戦論が台頭することになった。

追い込まれた福田首相は、修正協議を口にし、道路特定財源の一般財源化など、政策転換を指示したとされるが、自民党道路族がスンナリと受け入れるはずがない。道路に関して、民主党が主張を貫く限り、道路族に首根っこを押さえられた政府は中途半端な対応しかできず、ますます窮地に立たされることは必定だ。

むりやり財務省出身者を押し込もうとした日銀総裁人事でも、当初予想したように、「空席」となった責任についての世論の矛先は民主党にばかり向かうことはなく、むしろ福田政権の対応力の欠如を批判する声が強まっている。

日経新聞などは、「民主に大連立の亀裂」という小見出しで、民主党内の反小沢勢力が勢いを増しているかのような書き方をしているが、軍師、山岡賢次は「日切れ法案」対案が参院に提出された段階で、民主の勝利を確信し、むしろ小沢代表も「主戦論」の流れに乗ったほうが得策だと判断したのではないか。

民主党内は、結束が強まっていると考えるほうが自然だ。だからこそ、小沢-福田ホットラインは切断された。

一方、福田首相の求心力低下は明らかだ。道路族の反発を買い、党内に新たな火種が生まれた。慇懃無礼で嫌われ者の伊吹幹事長に党内をまとめる力量はない。福田首相と町村官房長官の呼吸もピッタリ合わず、改革したいのかしたくないのか、「経済成長路線」なのか「増税路線」なのか、日本の針路をきめられないまま迷走している。

おまけに経済無策で株価は急降下し、景気は明らかに悪化しはじめた。北京オリンピックを前にしたチベット動乱もあって、親中派の福田首相に向ける中川昭一らの視線は厳しさを増し、麻生待望論も強くなってきた。

あちら立てればこちらが立たぬ状況のなかで、さすがの福田首相も調整の限界を感じているだろう。すべては、財務省と国交省と道路族のいいなりになって、国民の支持が得られるはずのない「ガゾリン暫定税率」維持と「道路特定財源」の確保を進めようとしたことが、裏目に出ているのだ。

                        (一部敬称略)

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