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2008年4月18日 (金)

退官裁判官の判決文を代読したイラク空自活動違憲判決

その判決は、退官した裁判長の代読というカタチで言い渡された。航空自衛隊がバグダッドに多国籍軍の兵士を空輸していることについて名古屋高裁は、「憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」と、初めての違憲判断を示した。

全国各地で提起された自衛隊イラク派遣差し止めを求める集団訴訟の一つである。原告側は、派遣差し止めが却下され、敗訴しながらも、初めて示された違憲判断に「画期的判決」と評価。被告である国側は勝訴ゆえに最高裁に上告できない、という奇妙な決着の仕方となった。

この判決文を書いたのは3月末に64歳で退官した青山邦夫裁判長だ。05年3月、岐阜県可児市議選の電子投票に関し、市民が選挙の無効を求めた訴訟で、市民側勝訴の判決を下した。この経緯などからみて、原告有利の予測が広がり、判断が注目された。

これまで、各地の訴訟では1、2審で原告が敗訴し、上告した例はない。自衛隊派遣という高度な政治問題について、最高裁が憲法判断を避けることは明らかであるからだ。

原告は青山裁判長のの高裁判決に大きな期待をかけた。自衛隊派遣差し止めや慰謝料請求が認められないことは分かっていた。それよりも、彼らにとっては青山の下す判断が重要なのだ。

青山に最高裁から圧力があったかどうか。それは本人でなければ分からない。しかし退官を間近に控えた青山は、出世を考える必要もなければ、裁判所組織内の人間関係に腐心する必要もなかっただろう。信じるままに判決文を書けばよかったはずだ。

青山が示した判断について、朝日の社説は「高裁の司法判断は重い。与野党はすぐにでも撤収に向けて真剣な論議をはじめるべきだ」と主張。

産経は判決を下した裁判官が退官しているのは「公正さを欠く」とし、「イラクでの復興支援活動を貶める判断だ」と糾弾する。

憲法や安全保障についての両紙の考えの違いがあらためて浮き彫りになった。

原告のなかに、かつての駐レバノン大使、天木直人の姿があった。天木は2003年3月14日と3月24日の二回にわたり、米国のイラク攻撃に対する日本政府の方針に異を唱える「意見具申」を、当時の川口順子外務大臣あてに送った。

その後しばらくして、当時の竹内行夫外務省事務次官から1通の通知書が届いた。「本年夏に帰朝命令をさせていただく。勇退をお願いすることで取り進める」。事実上の退職通知であった。

天木は退職後、「さらば外務省」という本を出版するなど、日本の外交や外務官僚の行状を批判し続けている。彼の書物はやや外務省の仕打ちに対する怨嗟や私憤が表に出すぎるきらいがあるが、駐レバノン大使として勇気をふるって政府に「意見具申」したことは評価できるだろう。

「武力の行使」の放棄を謳った憲法9条1項。多国籍軍の兵士を「戦闘地域」であるバグダッドに空輸するのは「武力行使と一体化した行動であり、違憲」と断じた名古屋高裁の判断は確かに画期的だ。

しかし、この判断が日本の外交や防衛に直ちに影響するわけではない。自衛隊のイラクでの活動を制限する法的な効力はないのである。

                         (敬称略)

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三権分立が保たれたこの国の歴史的瞬間ですね。

まだ、この国も捨てたものではありません。

世界の評価が気になるところです

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