何か変だよ、「天声人語」と「産経抄」
「靖国の桜はきのうも満開だった。北風に花びらが舞うが、多くは揺れる枝にしがみついている。花見の名所の木々らしく、週末までは散るまいという意地なのか。風に負けてはならない時がある」
この美文調、今日の朝日「天声人語」の文末である。何がいいたいかというと、中国人監督のドキュメンタリー映画「靖国」を上映するはずだった五つの映画館が中止を決めたことはケシカランというのである。「日教組の集会を拒んだホテルと同様、メディアの一翼を担う映画館の萎縮は深刻だ」と指摘する。メディアの一翼といわれても、映画館は困るだろう。そこまでの高邁な意識を持たないと経営できないのだろうか。右翼の街宣車がやってくることがわかっていれば、普通の人なら萎縮する。
「靖国」という映画を観ていないから、中身にコメントはできないが、朝日新聞が「価値」を認め、多くの日本人に観てもらいたいのなら、フェスティバルホールや朝日ホールなど自前の劇場をこの作品の上映のためにに開放することもできるはずだ。新聞は言いっぱなしではいけない。映画館やホテルの身にもなるべきだ。
冒頭の文章は、映画館もホテルもわれわれ朝日とともに、右翼の風に散らされないようがんばろうという、呼びかけなのだろう。それにしても大時代な言いまわしではないか。
もう一つ、今日の「産経抄」も、おかしな論理を展開している。「日本人は成熟した、というべきだろう。安いガソリン目当ての渋滞はないか、客と従業員がトラブルを起こしていないかと、未明から新聞記者やテレビ局のクルーが全国各地を飛び回ったが、街は静かだった」という出だしの文章。
やっぱりそうでしょう。混乱などないでしょう。まずは、納得である。
このあと「昭和48年の石油ショックをきっかけに起こったトイレットペーパー騒動を身にしみて覚えている身には隔世の感がある」と続き、「日本人は大人になったがメディアと政治家は子供のままだ」と、政治家をむりやり巻き込んで自戒する。
おや、政治家へ話が向かうかな、と思ったら案の定だ。「道路特定財源のでたらめさを天下に知らしめたのは民主党の功績だ」とくる。どこの党の功績というよりも、衆参ねじれのプラス面なのだが、まあここまでは納得しよう。
このあとの論理展開がすごい。
「福田首相が珍しく21年度から一般財源化すると決断したのに、党首会談にも応じないのはどうしたことか。子供の民主党にはまだ政権を任せられない、と大人の有権者が判断しても仕方あるまい」
さっき持ち上げてもらった民主党が、いきなり「子供」にされてしまった。その理由は「党首会談に応じない」から、というひと言である。新聞と民主党が子供で、福田首相と自民党が大人だというのだろうか。それとも、福田首相も、自民党も子供なのか。
「ガソリン暫定税率が下がれば混乱するぞ」と、政府与党や財務省の尻馬に乗って世間をあおっていた子供の新聞が、何を語ろうとたいして説得力はない。
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