ロシアから帰国の福田首相を待ち受けていた一大事
最後までプーチンペースで進んだ首脳会談を終え、ロシアから帰国した福田首相を待ち受けていたのは、衆院山口2区補選の敗北だった。
年金も医療もガタガタに崩れ、老人が安心して余生を送ることすらできない世の中になっていながら、それを真剣に変えようともせず、道路づくりに躍起となる自民党政権に山口県民が全国民を代表して「ノー」の意思表示をしたということだろう。
いまになって自民党執行部は「これが民意とは思わない」と強弁するが、党内のホンネは「福田で選挙は戦えない」だ。“福田降ろし”の風はまだゆるやかながらも、ほぼ“規定路線”となった「洞爺湖サミット花道」に向かって吹いている。
それにしても、今回の日ロ首脳会談はなんだったのだろう。プーチンと妙に波長が合う森喜朗元首相のお膳立てで、北方領土問題の進展をもくろんだ福田首相だったが、所詮は切れ者、プーチン大統領の相手ではなかった。
「具体的に進展させたい」とする福田首相に対し、プーチンは「あらゆる分野で対話したい」とかわし、東シベリアでの油田の共同開発に合意したものの、日本にとって肝心の北方領土は「対話を継続する」で一致しただけ。つまり何の進展もなかったのだ。
極東・シベリアへの中国の影響力拡大を懸念するロシアが日本との経済関係を強化したいという意図は明白である。日本からの投資を呼び込み、極東・シベリア開発を進めたいというのがプーチンの最大関心事だ。
その具体案として、事務サイドで準備が進められてきたのが油田の共同探鉱だが、いまのところ、100億円程度を日ロで負担して合弁企業をつくり、5年間の油田調査をするという内容にすぎない。
他国の協力を仰ぎながらも資源開発への主導権を強める一方のロシアが、将来、これを日ロ双方にメリットのある事業に育て、日本への石油安定供給を約束するかどうか、まことに怪しいかぎりである。
プーチン・福田会談をセットした森元首相のハラのうちには「領土問題」を「平和条約」と分離し「まず歯舞・色丹二島返還を実現してから平和条約の交渉を進める」という考えがある。2001年3月、この考えをイルクーツクでプーチンに伝え、プーチンも関心を示した経緯があった。
森元首相の考えの是非はともかく、その後立ち消えになったイルクーツク案を今回の会談で復活させる思惑を福田首相も抱いていたはずだ。
ところが、話し合いは結局、経済優先のプーチンに押し切られ、福田首相はこわばった笑顔で日ロ友好ムードを強調するしかなかった。
かつて外務省ナンバーワンの情報収集力を誇った佐藤優や、東郷和彦、森敏光らいわゆる「ロシアンスクール」の面々が、鈴木宗男事件にからんで失脚し、ロシアコネクションが途切れたことが、いまだに影響しているのだろうか。
外交に活路を見出すしかなかったはずの福田首相は、日ロ首脳会談で際立った成果が上げられなかったうえ、近く来日する中国の胡錦濤主席に対しても弱腰の姿勢で国民の評価をさらに下げる懸念がある。
チベット問題や毒ギョーザ事件などについて、日本のトップとして毅然とした態度でのぞむことを国民としては求めたいところだが、経済界や親中派議員から手足を縛られている首相にそれを望むのはムリというものだろう。
(一部敬称略)

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» 【皇帝プーチン】到底適う相手ではない【ムッフン福田】 [ステイメンの雑記帖 ]
そもそも政治力量も識見も持ち合わせない 無能者ムッフン福田ごとき が、海千山千の「ツアーリ」プーチンと対峙しようとは 役者不足も甚だしい限りだ!
例え万全な立場で交渉に及んだとしても到底適わないのに、 レイムダック状態のムッフン福田 が何を言おうと、 鼻で嗤われて終わりだろう!
... [続きを読む]
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