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2008年4月19日 (土)

粉飾上場会社の監査法人に初の賠償命令

「トーマツ」といえば、法人会計の重鎮、富田岩芳氏を創始者とする、日本で最も信頼のおけるはずの監査法人である。

この法人に、大阪地裁が約1700万円の賠償を命じた。01年に破綻した大証2部上場会社「ナナボシ」の粉飾決算について、不正を見抜けなかった責任を問われたのだ。

上場企業の粉飾決算について、監査法人が責任を問われるのは当たり前のように思える。ところが、これまで裁判で監査法人の過失を認めたケースはなかったという。

マスコミに大きく騒がれたカネボウの粉飾事件では、中央青山監査法人の会計士3人が粉飾を指南した証券取引法違反の容疑で起訴され、金融庁から業務停止処分を受けて、最終的には監査法人そのものが解体された。

今回は、あくまでそうした特殊ケースの犯罪性を問うものではない。その点がむしろ重要であろう。

ナナボシの管財人、辰野久夫弁護士らがトーマツに約10億2000万円の損害賠償を求める訴訟を提起したことにより、会計監査における監査法人の責任の重大さが問われることになったのである。

ナナボシは98年~01年の3月期決算で、下請けのA社と通謀してウソの灌漑工事などをでっち上げ、架空売上を計上した。判決では、01年3月期の株主配当額8500万円をナナボシの損害と認定、トーマツにもそのうち2割の責任があるとして賠償額を算定した。

監査法人の信頼性。この問題がクローズアップされたのは、2001年12月に破綻した米国・エンロン社の粉飾に、アーサー・アンダーセンというアメリカ最大級の会計事務所が加担したことがきっかけだ。数年間にわたる利益の水増しで、株価を上昇させ、ストックオプションなどにより会社のコストを下げる経営は、会計事務所の協力がなければなしえなかった。

先述した中央青山監査法人はカネボウのみならず、日興コーディアルグループ、ライブドアマーケティングの粉飾にもかかわり、日本のマーケットの信頼性を大きく揺るがした。

トーマツも無縁ではなかった「粉飾」へのかかわりは、監査法人とクライアントである会社との根深い関係をうかがわせ、現在の公認会計士制度そのものへの疑念を想起させる。

たとえば、長年にわたり同じ監査法人の同じ会計士が担当し、会社の役員や部長と親しい場合、粉飾の事実を発見しても、それを勇気をもって世の中に明らかにできるだろうか。

ただ、今回の訴訟は、トーマツがナナボシの粉飾をわかっていて「見逃した」ということではない。あくまで「粉飾を見抜けず、会計を適正とする監査意見を出した責任」を問うものだ。

これについて、大阪地裁は「実施すべき監査手続きを満たしたものとは言えない」と判断した。

朝日新聞によると、辰野弁護士は「証券市場に対する信頼性が問われるなか、粉飾決算が企業ぐるみであっても、監査法人にも責任があると認めた画期的な判決だ」とコメントしている。

この判例が出たことによって、監査法人や公認会計士は、馴れ合いや手抜きの監査手続きは絶対に許されないという自覚を高めなくてはならない。

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