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2008年5月 1日 (木)

環境先進国ニッポンはフィクションだった

バブルが崩壊した1990年以降、日本では石炭火力発電所が次々と建設されてきた。石油などよりコストが安いからだが、地球環境にとってはこれが一番クセ者だった。気象変動の元凶、CO2排出量がなんと石油の1.2倍、天然ガスの1.8倍もあるのだ。

京都議定書では、日本は2008年から2012年の間に1990年を基準として、CO2排出量を6%減らさなければならない。ところが現実にはいまや90年より8%も、逆に増えているのである。

この原因について、政府は次のようなごまかしの説明をし、マスコミも信じてきた。

「基準年の1990年には、日本はすでに省エネや排ガス対策が他の先進国より格段に進んでいて、それ以上の削減は難しかった。ヨーロッパは89年にベルリンの壁が崩壊し、東欧諸国が西側に入ってきて削減する余地が大きかっただけだ」

これが有名な「絞りきったカラカラの雑巾」論であり、「日本は環境・省エネ先進国」と、国民を信じ込ませた手口である。

「日本の産業界が効率的というのはフィクションだ。実は“びしょぬれの雑巾”なのだ」。今月22日の衆院環境委員会で、意見陳述した環境エネルギー政策研究所所長、飯田哲也は厳しく政府の姿勢を批判した。

8%もCO2排出量が増加したのは、実は石炭火力の発電所をつくり続けてきたからだった。世界銀行の指摘によると、90年以降、日本は経済成長をほとんどしていないのに、石炭火力で1.3億トンも二酸化炭素を増やしている。先進国の中で、気候変動対策の評価は最低、世界70カ国の中で61位である。

石炭を使う発電に依存しているかぎり、世界の環境先進国とはみなされないだろう。

地球温暖化研究の権威、NASAゴダード宇宙研究所所長のジェームズハンセン博士は「CO2を隔離する技術が開発されるまで、石炭を燃やす火力発電所の新たな建設を一時停止するべきだ」とさえ指摘している。

にもかかわらず、今年3月、経産省資源エネルギー庁が出した「長期エネルギー需給見通し」は、石炭火力発電所の建設に歯止めをかけようとせず、国民生活におけるCO2削減に重点を置いた省エネ策を打ち出している。

今後も石炭火力発電所の増設計画は目白押しである。東電の「常盤那珂2号」、関電の「舞鶴2号」、中国電力の「大崎1号系列」、電源開発の「磯子新2号」、九州電力の「松浦2号」。

それにくらべ、太陽光、風力など枯渇せず、CO2を出さない自然エネルギーにはきわめて消極的だ。「エネルギー変換効率や設備利用率が上がらないから」と経産省はいう。要するにコストが高くつくことを理由にしている。

一方、ドイツなどEU諸国は自然エネルギーの普及を強力に進めている。現在のコストより、「未来のエネルギーの本命」になるものへの投資を重要と考えるからである。これを、わが国はどうとらえたらよいのか。

現在、国会で地球温暖化対策推進法の改正案が審議されているが、このようなエネルギー政策のもとで、十分な環境対策が盛り込めるはずがない。中長期的なCO2削減目標も設定されず、自然エネルギーの導入目標にも一切ふれられていない。

環境省と経産省の力関係もあるだろう。どうみても現時点における電力、鉄鋼など産業界の意向が強く反映された内容になっている。

7月の洞爺湖サミットで、議長国日本は「地球環境」でリーダーシップを示すはずだったのではないのか。

飯田所長は言う。「上流の産業や電力業界を放置し、下流の国民生活に焦点をあてた温暖化対策は現代の竹やり戦争のごとき愚策だ」。

昨年のハイリゲンサミットで日本は「低炭素社会」「クールアース」を提唱した。環境省が主導だと、かっこいいタテマエが高らかにうたいあげられる。ところが、経産省にかかると、「新国家エネルギー戦略」という、産業界に配慮した近視眼的な達成目標になるようである。

この国に、しっかりとした哲学をもつリーダーがいないのは寂しいことだ。統一した国家戦略がなく、各省がバラバラの政策を打ち出すだけである。このままでは、日本は卓越した省エネ技術を持ちながら、環境後進国の汚名を着せられ続けることになる。

                           (敬称略)

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コメント

関電の計画中発電所
 舞鶴2号(石炭) 90万kW
 堺港1号~5号(LNG) 200万kW + 和歌山(LNG) 370万kW
関電の(火力発電の)主軸は石炭ではなく、
CO2排出量の少ないLNG(天然ガス)ですね。
電力業界は環境問題を放置してないようですが。

>CO2排出量がなんと石油の1.2倍、天然ガスの1.8倍もある
従来の発電所の熱効率が41%だったのが、
天然ガス専用の新型発電所では58%になるので、
発電効率があがり、単純に1.8倍とはいえなくなります。
逆に言えば、LNGではCO2を半減できるようです。

さらに、石炭の発電所も放置されていません。
バイオマス燃料と混燃することで、
舞鶴1号機で年間9.2万トンのCO2を削減する計画があります。
さらに、CO2を地中に固定化して、
換わりにメタンを取り出す技術の開発も進められています。

「CO2を出さない自然エネルギー」は確かに大切です。
しかしCO2「ゼロ」といえば確かに聞こえは良いですが、
「ゼロ」にできるのは全体の何パーセントなのでしょう?
それより、LNGでCO2を半減!バイオマスで9.2万トン削減!
という現実的な目標のほうがよっぽど減らせるのではないでしょうか。

というわけで責任転嫁などせずに、下流の我々も頑張りましょうよ。

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