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2008年5月30日 (金)

自衛隊輸送機見送りの顛末から見えるもの

歴史的な出来事となるはずだった自衛隊輸送機の中国派遣はどうやら、見送られるようだ。「大山鳴動」の顛末をながめると、日中間によこたわる“活断層”がまたぞろ動いたことがうかがえる。

全ては中国の国防当局が、各国の北京駐在防衛官を集めた席で「四川大地震避難者への支援を歓迎したい」と呼びかけたことからはじまった。

1500万人もが避難する被災地に差し迫って必要なのはテントや毛布だ。330万張り以上のテントがほしい。ここは緊急に各国に協力を要請して、かき集めるしか手立てはない。

中国では命令ひとつで迅速にコトを動かせるのは軍隊だ。だから各国の北京駐在防衛官に要請するのが手っ取り早いと中国のモノサシで考えたのだろう。

この呼びかけに応じ、アメリカ、ロシア、パキスタン、韓国などの軍隊が救援物資を中国に運び込んだ。

しかし、日本は戸惑い、迷った。日の丸のついた自衛隊の輸送機が中国に入っていいのか。「反日感情」は大丈夫なのか。せっかく胡錦濤主席の来日や、日本の救援活動で、日中関係が好転しつつあるときに、中国侵略の歴史を思い出させて冷水を浴びせることにならないのか。

日本では自衛隊を動かすほうが法令上、手間がかかる。民間機のほうがむしろ大量の物資を早く運ぶことができる。

高村外相は記者会見で、「なぜ自衛隊機なのか」と質問を受け「自衛隊機で運んでくれということではなく、自衛隊機でも結構ですということと理解しています」と答えた。

それなら、民間機でもいいわけだが、福田首相は日中関係改善をアピールする絶好の機会ととらえた。自衛隊機にこだわったのは日本側だった。

不安のなかで、防衛省、外務省は救援物資輸送に自衛隊の輸送機を使う方針を固め、準備をはじめた。

中国国防当局にしてみれば、日本だけが特別というわけでなく、等しく各国に協力要請したのだろう。だから、当然自衛隊機を受け入れることを前提にしていたはずだ。

ところが、いつものことながら日本のマスコミが過剰反応をした。「歴史問題」「反日感情」を持ち出して、自衛隊輸送機派遣のニュースに特別な意味づけをした。中国の変化に期待を寄せる論調だった。

続いて、中国の国際問題紙・環球時報電子版が「中国が自衛隊派遣を希望と日本メディアが報道」と流した。

これをきっかけに状況が一変した。中国のネット言論が反応したのだ。「日本の軍隊が中国に入るのは許せない」「医療チームはいいが、武力は拒否する」などとという、意見の書き込みが増え始めた。

大規模災害時に各国軍隊が協力して救命救助にあたるのは近年の国際的な流れだ。今回も、その一環だったはずだが、いざとなれば日中の特殊事情が邪魔をする。

「靖国」も「歴史教科書」もしかり、多くの日中間の問題は日本のマスコミが火をつけて、中国側の反論コメントを引き出し、あげくの果てに政治利用されてきた。

中国政府はネットを中心とした反対論の盛り上がりを無視できず、日本の自衛隊輸送機派遣に「OK」のサインを出せなかった。しかたなく、日本政府は民間機をチャーターしてテントや毛布などを輸送する方針に変更した。

民主主義と一党独裁。自由な言論とメディア規制。日中間の情報伝達は、二つの異なった体制の中で、つねにいびつなカタチで行き来し、双方に誤解を生んできた。そこにネット言論が加わってさらに複雑な様相を呈している。

しかし今回、中国のネット言論では、自衛隊機拒否の意見とともに、受け入れ賛成の声も多かったという。ネット言論がナショナリズムに傾斜しやすい現状は否定できないが、中国の情報自由化への“希望の光”であることもまた確かだろう。

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» 自衛隊機 [松下賢次 とんねるず 動画 画像]
自衛隊機の中国派遣 互恵的信頼を強めよう中国新聞そこに救援物資を輸送するため、政府は航空自衛隊機を初めて中国に派遣する方針を固めた。 人道支援とはいえ、中国国内には自衛隊に対する拒否反応もある。日の丸を掲げる自衛隊の部隊の受け入れが実現すれば、画期的なことである。首脳の相互訪問などで友好に転じた両国 ... 自衛隊機派遣は当面見送り 中国・四川大地震中国新聞外務省筋によると、中国・四川大地震被災者救援のための自衛隊機派遣は当面見送り。 【北京29日共同】中国外務省の秦剛副報道局長は四川大地... [続きを読む]

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