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2008年5月26日 (月)

作り物のように美しい日本救援隊の黙祷写真

A 新華社のその写真はローアングルから、日本の救助隊員たちの黙祷する姿と顔の表情をとらえていた。

母娘の遺体を囲んで、隊員たちが二列に整列し、両腕、両足を揃えて頭を垂れる細長く狭い空間は、周囲の混乱と瓦礫の世界から切り取られたかのように「聖なる静寂」に満たされている。

この写真はもちろん、四川大地震被災地での一つの厳然たる事実を撮ったものである。だから、死者に対する援助隊の哀悼の心が伝わり、中国全土に感謝と感動の波が広がった。

ただ、なぜこれほど不自然なほどに哀しく美しいのだろう。この写真をみれば誰だって胸を打たれるに違いない。写真を撮った中国国営通信、新華社の記者は援助隊の到着以来、同行取材を続けていたという。

配信を受けた北京週報電子版には援助隊の「活動の軌跡」として、中国到着から帰国までの写真が掲載されている。
「成都に到着」「青川県の関荘鎮に到着」「困難な中での捜索」「崩れた建物の下の生存者を探す」「災害救助犬」「北川中学で救助計画を協議」などと写真説明がつけられた15枚だ。

緊迫感や悲壮感、怒りや戸惑い、悲しさや切なさ。そういった被災地の空気は写真からほとんど感じられない。この取材の企画が最初から「美談仕立て」と決められていた可能性はある。取材者の心構えや眼差しは、写真のなかから読み取れるものだ。

結局、日本隊は15人の遺体を捜し出して、帰国した。持参したハイテク機材を駆使できる現場ではなく、生きたまま救出できなかったのは口惜しいことだ。それでも中国の報道は、戦後初めて、日本への「感謝」へと自国民を誘導した。

阪神大震災の起きた日、僕はワケあって地震直後から車で神戸に向かっていた。道路はあちこちで陥没し、車はなかなか前に進めない。夜、どうにか神戸に着き、用も済ませたが車はその場で立ち往生となった。しかたなく車中で一夜を明かし、朝になって、車を放置したまま電車に乗れる西宮まで歩いた。

歩道はガラスや瓦礫が散乱していたが、大勢の人たちの列に入ってひたすら前に進む。国道の両側は無残に建物が崩れ落ち、「これがあの美しい神戸の街か」と思うと、涙があふれてきた。

新華社の記者もおそらく悲しみをこらえながら取材を続けたと思う。日本の援助隊員も生還者の出現を願って精一杯の努力をした。そして、多くの中国国民がネットに書き込んだ賞賛の声も心底から出たものだろう。

しかし、報道された写真や記事は事実のひとかけらであって、全てではないことを決して忘れてはならない。一つの写真の効果で、一夜にして対日感情が変わるとしたら、それはそれで恐ろしいことだ。

決して「美談」だけではない。記者も、隊員も、政治目的に利用された面があるかもしれない。それでも、中国人から非難を浴び続けてきた日本人の心情としては、警戒心を抱きつつ、やはり中国人の賛辞がうれしい。互いに心理は複雑だ。

中国国営のCCTVは今回の地震で、24時間の生中継をした。地方政府への民衆の不満が噴出し、亡くなった児童の親たちが教育局の職員に詰め寄った。ある父親は細い鉄筋の入った建物のコンクリート片を持ち上げ、「これでうちの子供は殺された」と悲痛の声を上げた。

これが、中国の情報隠蔽の扉をこじ開けるきっかけとなるのではないかとする識者の意見もあるが、まだ判断するのは時期尚早だろう。メディア統制の元凶、中国共産党中央宣伝部がその権力をやすやすと投げ出すとは思えない。

新華社電の「黙祷写真」についても、中国の報道姿勢の変化として認めつつ、冷静な観点も失わないようにしたい。

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コメント

■不可解な中国の報道二題―やらせ義援金(動画あり)とノーベル平和賞
こんにちは。日本の救援隊の写真はやらせでは無いと思います。このような風景は私自身も現実に似たようなものなら見たことがあります。ただし、それをどのように写すか、報道するかについては別問題だと思います。
中国は大地震があってから、さまざまな社会問題が噴出していますね。人身売買もその中の一つだと思います。それにしても、中国中央テレビのやらせ義援金報道や、胡錦濤、温家宝をノーベル平和賞の候補者にすべきだという世論が中国で巻き起こっているとの新華社の報道など、不可解な報道が多すぎます。私は、この混乱振りからして、オリンピック開催後から中国バブルの崩壊を経て、国内外の情報開示、法治国家化、政治経済の分離圧力がかなり高まると思います。これに適切に対応ができなければ、旧ソ連邦と同じ運命をたどるものと思います。詳細は私のブログを是非ご覧ください。

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