防衛疑惑・秋山直紀に地検特捜の強制捜査迫る
黒いスーツにシャツ、サングラス。黒ずくめはかえって目立っていた。しばらくマスコミの話題から遠ざかっていた防衛疑惑のキーパーソン、秋山直紀がアメリカから成田空港に帰ってきた。
同行していた元防衛相、久間章生はわざと2時間後の便で帰国するという気のつかいようだ。
この日、秋山を報道陣が待ち構えた理由は、東京地検特捜部がいよいよ本格的に秋山にターゲットを絞って、防衛疑惑の解明に乗り出したからだ。
マスコミにリークされた容疑の内容はあくまで、脱税である。しかし、これは強制捜査に持ち込むためのとっかかりにすぎないだろう。本命はあくまで、防衛関連企業と秋山と有力政治家らをめぐるカネの流れだ。前防衛事務次官、守屋武昌や防衛商社「山田洋行」元専務、宮崎元伸に対する取調べのなかで、特捜部が何かをつかんだ可能性もある。
秋山は社団法人「日米平和・文化交流協会」、ならびに任意団体「安全保障議員協議会」の事務局長という表向きの肩書で、国防族議員、官僚OBや三菱重工など防衛企業関係者らとのネットワークを形成。個人ビジネスとして、アメリカの国防関係者や軍需産業とのコネを利用したコンサルタント収入を日本企業から得ていた。詳しくはこれまでに書いた当ブログを参照してほしい。
秋山のコンサル事業は実態として個人ビジネスだったが、アメリカに設立登記した二つのダミー会社を脱税目的などに使っていたようだ。
「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」と、「カウンシル・フォー・ナショナルセキュリティ(米国安全保障研究所)」である。
前者は代表取締役とされている米国人が故人である。後者も、登記先住所(ワシントン)にそういう法人はない。つまり、米国に実体はなく、マンション「パレロワイヤル永田町」にある秋山の事務所が両社の実質上の本社と考えられる。
秋山が防衛商社「山田洋行」など少なくとも10社から数億円のコンサルタント料を受け取るさい、これらの米国法人名義の口座に振り込ませるなどして所得隠しをしていた疑いが強いということだ。
それにしても、この秋山という人物、過去を振り返ってみると、相当あくどい手口で、大金をフトコロに入れている。
秋山はかつて所有していた「パレ・ロワイヤル永田町」11階の103、4、6号室の一部を担保に、1990年、軍需産業関連の某財閥系企業から、数億円の借金をした。ところが、そのカネはその後一切、返済されていない。秋山は「支払い不能になった」と言うが、自己破産などの手続きはおこなっていない。
1992年、秋山は不動産会社「ファースト・インターナショナル」の代表取締役として、横浜市内に5階建て賃貸マンションを建設。資金繰りの悪化を理由に、約7億円の代金支払いをストップした。
建設会社は当然、代金の支払いを求める訴訟を起こす。95年7月、ファースト社が2億5000万円を支払うことで和解が成立したが、やはり支払いが実行されず、建設会社はマンション住人からの賃料を差し押さえようとした。
ところが、秋山は別のマンション管理会社を設立、新会社が住人にまた貸しする契約に変更し「10年分の賃料としてファースト社に3億円を前払いした」として、差し押さえを免れた。
その後、神戸製鋼や山田洋行との関連事業で、1億円の裏金が山田洋行から秋山の手に渡ったことも分かっている。
守屋らの汚職事件をきっかけに、政治家の関与が注目されてきた一連の防衛利権疑惑。その中心にいて最も胡散臭さを感じさせるのがこの秋山直紀という人物だ。特捜部は早くから彼に照準を合わせて捜査を進めていたと思われる。
最近はさすがに、防衛関連企業や政治家も秋山から離れていっているようだが、久間章生はよほど義理堅いのか、今回も秋山と一緒にワシントンやハワイで米軍施設などを視察したという。
イトマン事件で知られる許永中の関連企業、大阪国際フェリーの社長を1986年までつとめた経歴を持つ久間は、フィクサー的な雰囲気のある人物と波長が合うのであろうか。
東京地検特捜部の動きからは、防衛疑惑をゴルフ接待の守屋・宮崎事件で終わらせず、秋山を突破口に政界の巨悪へ捜査の手を伸ばす意図がうかがえる。防衛関連産業にからむ巨大な利権に、金権政治家が関与し、裏資金を得てきたことは想像に難くない。国民の税金を守るためにも、利権構造の闇を暴き出してもらいたい。
(敬称略)
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