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2008年5月 7日 (水)

胡錦濤「春の旅」は本当に日中「互恵」か

GWの最終日、しかも新聞休刊日の前日で、ふつうなら記者たちもひと息つけるはずだった。

なぜかその日に、微笑みとパンダレンタルをたずさえて、中国の最高権力者、胡錦濤主席が来日した。懐に「歴史認識」のカードをしのばせてはいるが、今回はそれを切るつもりはない。

中国側が「暖かい春の旅」という訪日のコンセプトを決めこんでいるのだ。歴史カードをしまいこみながら、政治的優位に立って、北京オリンピックへの協力をとりつけ、中国への投資、先進技術の移転をはかる。そのためのパフォーマンスを暖かい日差しのなかで進めることが来日の目的であろう。

かつて外務省「チャイナ・スクール」の代表格といわれた元駐中国大使、谷野作太郎をブレーンとする福田首相は、胡錦濤にとって組みやすい相手でもある。

外務省アジア大洋州局参事官、小原雅博は万全の準備を整えてきた。7日の首脳会談のシナリオについても中国側の事務方と十分、協議を重ねたはずだ。共同声明の文案も合意している。あとはスケジュールどおり運べばいい。

6日、福田は行きつけの日比谷のレストラン、松本楼に胡錦濤を招き、自らお気に入りの高級ワインを持ち込んで、私的な夕食会を開いた。

フランス料理を囲んだのは、両国の外交関係者を中心とした顔ぶれだ。外相や大使ら、双方とも8人ていどだったと報じられている。もちろん、福田が最も信頼を置く中国要人、武大偉外務次官も出席した。

和やかな席だったことが想像できる。福田より年下とはいえ、しだいに独裁的権力者の風格を身につけ始めた胡錦濤は終始、にこやかだっただろう。こわさを秘めた人物の笑顔は、なぜか人を惹きつける。

小原が準備過程で一番気をつかったのは「チベット」「毒入りギョーザ」を、首脳会談でどう処理すべきかだ。この問題に触れなければ、世論の批判を浴びる。かといって、あまり正面切った議論にして「戦略的互恵関係」に支障をきたすようでは困る。

「戦略的互恵関係」とは、「善隣友好」でも、「パートナー関係」でもない。小原によると、「北朝鮮、気候変動など世界の問題で両国が協力し、未来に向けてともに利益を得ていくこと」だという。つまり、これまでの領土紛争、靖国神社、歴史教科書などをこえた広い視点で、協力しようというわけである。

これはお互いに心地よく響く言葉だが、同盟国である米国から見ると面白くはないだろう。しかし、米国も中国にすり寄らざるを得ない経済的事情がある。

今回の日中共同声明は、この「戦略的互恵関係」の強化をうたいあげたものの、東シナ海ガス田開発など懸案に関する具体的進展はほとんどなかった。

国民の関心が高い「チベット」「毒入りギョーザ」についてはこのような内容が盛り込まれた。

福田首相 「中国産冷凍ギョウザ問題については、日中双方で捜査と協力を更に強化していくことで一致しました」

福田首相 「チベット問題については、胡主席より4日にダライ・ラマ氏側との話し合いを行った旨の説明がございました。これに対し、私からは本格的対話に向けた第一歩として評価すると申し上げました」

日中事務方の事前打ち合わせの結果は、こういうことだった。ほとんど意味のある内容はない。「暖かい春の旅」に冷風を吹き込みたくなかったのだ。

しかし、これで人権や食品問題に隣人として苦言を呈することさえできない福田首相の対中姿勢への批判がいっそう強まることも予想される。

中国は自信と不安のなかにある。世界経済に重要な地位を占めるようになった自信はますます深まっている。同時に、技術力がともなわず、環境が悪化し、所得格差による不満がたまっている国内の状況は、バブル崩壊と反政府感情の爆発につながりかねない。

これまで「靖国」など“日本たたき”によって、中国国民の不満のガス抜きをしてきたが、いつまでもその手法が通じるとは思えない。日本企業を巻き込み、うまく利用して、できるだけ早く先進国の仲間入りを果たしたいというのが、中国指導部のホンネだろう。

その目的のために「戦略的互恵関係」という言葉が使われている。ところが、目の前の収入確保に躍起になっている日本企業は、無邪気に技術や人的資源を供与し続けているように見えてならない。ほんとうに、はるか未来に向けて「互恵」が続けられるだろうか。

日本が長年かけて蓄積してきた技術を猛烈なスピードで吸い取ったあと、人口減少高齢化の日本に中国がどんな魅力を感じるか甚だ疑問だ。もちろん、教育が再生され、技術立国ニッポンが磐石であれば別の話ではある。

さもなければ「資源も食料もレアメタルもウチの13億人分で手いっぱいだよ」とあしらわれ、ますます中国に媚びていかねばならない時が来るかもしれない。

                          (一部敬称略)

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