渡辺行革潰しを画策する二橋官房副長官の権力
この国の最大の病根、官僚支配をぶっ壊すはずの渡辺行革が、またしても揺らぎはじめた。
民主党の修正要求に応じ、難航の末に成立した国家公務員制度改革基本法。その具体的な制度設計を担う推進本部の事務局長ポストは、なぜか経団連の事務局畑を一筋に歩んできた立花宏(前専務理事)に決まった。
そこには、したたかな官僚の静かなる“逆襲”があった。
最初に名前があがった慶大商学部教授、清家篤は6月25日の当ブログで書いたように、官僚にとってベストの人選だった。ところが、渡辺行革相と清家は考えが正反対で、もともと相性が悪い。渡辺が反対する前に、清家自身が「この話は受け入れられない」と固辞した。
そこで、全省庁が“改革骨抜き”の期待を寄せる二橋正弘官房副長官と坂篤郎官房副長官補らは考えを練り直した。
民間から人選する場合、政府の審議会とか有識者懇談会のメンバーなら、「身体検査済み」である。過激な言動はなく、官僚のコントロールがきく。
白羽の矢が立ったのが立花だった。立花は、民主党に天下りバンクだと批判される「官民人材交流センター」の制度設計を審議した有識者懇談会のメンバーである。
人材交流センターは、官僚の再就職斡旋を一元化するというものだが、もともと天下り廃止論議をかわすための見せかけであり、あまり役に立つ機関になりそうもない。
かつて、小泉・竹中改革を支えた元内閣参事官、高橋洋一はこのように説明する。
「センターに登録するのはメインストリームを外れた役人が大半になる。メリットのない人間を引き受けたい組織があるはずはない。(センターをつくるネライは)役人に自分の市場価格を自覚してもらい、能力主義への移行をスムーズに進めるためだ」
だとするなら、計15回にわたり、8人の有識者が議論を重ねてまとめ上げたセンターの「制度設計に関する報告」も、たいした意味はないことになる。たしかに、自力で天下りできる官僚は、こんなものなくとも困らない。
日本有数のシンクタンクといわれる経団連事務局の要職をこなした立花ほどの人物が、そんなカラクリがわからないはずはないだろう。所詮、政府とのお付き合いにすぎない。事務局の官僚がつくった案をたたき台に、もっともらしい発言をしておけば、役人は喜んでくれるのだ。
ところで、経団連と言っても、立花はコストにシビアな会社経営の経験はゼロだ。東大卒のエリートであり、官僚的体質がないとはいえない。
二橋らは同質のニオイを嗅ぎ分けていたはずだ。そして、さすが抜け目がないことに、前総務事務次官の松田隆利を事務局次長に押し込んだのだ。二橋もまた総務省の前身、自治省の事務次官だった。
つまり、自分の後輩事務次官を立花の補佐に就け、官僚主導の制度設計を“担保”したのである。恐るべき切れ味の人事戦略といえよう。
二橋は昨年末、渡辺行革相の独立行政法人改革を骨抜きにした“実績”がある。事務方の官房副長官である二橋は、事務次官会議を仕切る、官僚界のトップである。
渡辺が福田首相に、独法改革へのリーダーシップを直談判したことを聞き、二橋は動いた。「渡辺改革案」を聞きだし、それををズタズタに修正して、族議員への根回し、官房長官の説得を進め、ついには福田首相の了解を勝ち取った。
改革の目玉であった都市再生機構は結論を先送りされ、巨額無駄遣いのシンボルといえる雇用能力開発機構でさえ、いつの間にか温存されそうな雲行きに変わってきた。舛添厚労相も、二橋や厚労省の役人に取り込まれてしまったかのように、かつての威勢のよさは消えうせた。
安倍晋三は、この官房副長官という最高ポストに、事務次官の経験がない元大蔵官僚、的場順三を充てたことが、オール霞ヶ関の怒りを買い、自ら首相退陣への導火線をつくってしまった。
二橋は小泉時代にもこのポストをこなし、公務員改革を旗印にする安倍に嫌われて退任したあと、福田に呼び戻された官界の“牢名主”だ。官房副長官補、坂篤郎も二橋にひけをとらないツワモノである。
やわらかな物腰で、したたかに国益より官僚組織を守る。そういう連中が内閣の中枢で総理と呼ばれる人を動かし、実権を握っている。
そして、各省庁は族議員を“養成”して与党をコントロールし、官僚が政治家に使われているフリをして、政治家を使っている。
独法に続いて公務員改革の行方も怪しくなってきた。首相がよほど肝を据えて取り組まないことには、国民の望む方向には進まないだろう。
(敬称略)


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