官僚も教師も、落書き女学生の「謝る心」を学べ
悪いことをしたら素直に謝る。それが昔から教え込まれてきた日本人の精神だ。
フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に落書きした日本の女子学生が、現地を訪れて謝罪したことが、イタリア人の心に響いているようである。
「文化を大切にする日本人の意思と厳しい態度に考えさせられた」とフィレンツェ市の副市長が語ったという。
イタリアの街はバスも、電車も、建物も落書きだらけだ。イタリア人の大らかさなのか、これに対する当局の態度は寛容だった。ところが、遠い日本で落書きが問題となり、新婚旅行中に落書きした高校野球部監督が厳重処分された。
イタリア人は驚いた。同じ歴史と伝統文化のある国だが、日本人はこれほどにまで潔癖なのか。日本からもたらされたニュースに現地メディアは飛びついた。「文化遺産を汚したことを恥じる日本人の心に学ぶべきだ」。そんな論調が広がった。
過ちは誰にでもある。避けがたいことだ。しかし、気がつけば訂正し、反省し、心をこめて謝ればいい。必ず人の心を打つはずだ。謝ることは恥ではない。
残念なことに、日本には謝ることを恥と考えて、「無謬性」という牢獄にとらえられたままの人たちがいる。「官僚村」の住人たちだ。
諫早湾干拓事業は、明らかに国の政策の誤りである。戦後、食糧増産という必要性から計画されたが、やがて減反政策で不要になった。それでも、公共工事を待ち望む利害関係者のために、畑の水源確保、そして防災へと目的を変更して事業を強行した。
その結果、有明海という豊饒な海の生態系は危機に瀕し、潮受け堤防に隔てられた漁業従事者と農業従事者の利害対立を生んだ。当初計画の二倍、2,533億円の巨費をつぎ込んだ結果がこれだ。
佐賀地裁が排水門の開門を国に命じた判決を不服とし、農水省は控訴した。これは泥沼化への道に過ぎない。控訴反対の姿勢を示した鳩山法相を納得させるため、開門したらどんな影響が出るかを評価する環境アセスメントの実施を打ち出しているが、苦し紛れの方策に過ぎない。
潔い日本人なら、こういう姑息なことをせず、まず国の誤りを素直に認めるべきである。
1997年、潮受け堤防からギロチンのように閉鎖板が落ちて諫早湾を分断した。このような自然破壊工事を許した当時の首相は橋本龍太郎、農水相は藤本孝雄である。
その後、2001年に武部勤農水相は、環境破壊の現実を認め事業の抜本的な見直しを表明したが、その退任を待って、農水省は再び事業を推進した。
「動き出したら止まらない日本の公共事業」。そこには、時代や事情がどう変わろうと、その現実から目を背け、「計画者の判断」を正当なものとして受け継いでいく「官僚村」の掟がある。
閉ざされたムラ社会で、上下関係だけを大切にしていくという点では、学校の先生たちの世界も同じだ。教師、校長、教育委員会。そのタテ社会で、お付き合いをひたすら大事にしていく。
そして、いつの間にか「教師村」の子弟ばかりが仲間に入ることを許されるシステムが出来上がる。そこに、おカネや、議員の口利きが効果を発揮する余地が生まれる。
教育関係者が汚職で逮捕された大分県は、日教組の組織率が全国でもトップクラスだと聞く。傘下の大分県教職員組合は教育長に「先生は皆悪いとされれば現場は心外。県教委の姿勢を改めて頂きたい」と抗議文を手渡したという。
事件の当事者と組合との関わりがあるかどうかは知らないが、全て県教委の責任にする姿勢にも疑問を感じる。少なくとも教師のモラルの問題である。自分たちには関係ないということでいいのだろうか。
教職員の組合として、他人事と考えず、「これを機に、教師みんな襟を正そうではないか」と呼びかけるくらいのことをしてもいいのではないか。
冒頭の「間違ったことをしたら潔く素直に謝る」という精神こそ日教組の言う「生きる力」にもつながるはずだ。研修や話し合いを通じ、そういう子供たちを育てる教師をどんどん世の中に送り出していただきたい。
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最近ブログを始めましてクレイジーパパさんの記事に共鳴を覚えている者です。
あるブログを抜粋
教員採用不正事件
今、大分県の教員採用不正事件が全国ニュースで話題になっているが、いまさら何を騒いでいるんだろう?という不思議な気がする。教職員を含め地方公務員採用に於いて、優先親族推薦採用?は戦後間もない頃からの暗黙の了解で慣習みたいにして行われてきた誰もが認識している事実であるからだ。東京都も例外ではないと私は知っている。何故なら私は若い頃から北は北海道から南は九州まで放浪ではないが職を転々とし移り住んで土地土地で人々と交わり親しんできて優先親族推薦採用の現実をこの目で見てきたからである。
私が小さい頃、何故今でも覚えているのか不思議だが?近所のオジサンが「息子が頭が悪くて学校を出ても就職出来ないので親戚に頼んで恥ずかしいが市役所に入れてもらった…」と私の父に言っていたのを覚えている。勿論そこには御礼と称して現金の授受は行われている。その頃は現在と違って地方公務員というのは、さほど魅力のある就職先では無かったようである。方言で味噌っカスの就職先と言われていた事もある。
それから何十年かの歳月が流れ公務員の就職倍率は何十倍となったが昔の慣習は今現在も脈々と残っている。就職氷河期には高額賄賂が飛び交ったとも聞いている。
50代以上の人達は皆が知っている事実を「今初めて知りました!」「許せないですよね!」と50代以上のキャスターやアナウンサーが平気な顔で吠えている。白々しい限りである。
決して許されるべき慣習ではないが今まで見て見ぬ振りをしてきた輩が鬼の首でも獲ったように吠えているのを見聞きすると怒りが込み上げてくる!
一番可哀想なのは不正の為に採用試験を落とされた若者たちである。偉そうなことを言っても黙して語らなかった私も同罪である。
誠に申し訳無く謝意を表明します。
この事件を糾弾するのであれば教職員だけでなく一般公務員にも普及び全国規模の一大不正採用汚職事件となるだろう。
地方の議員や有力者は現在必死に火消しに東奔西走しているのではないだろうか…!?
投稿: | 2008年7月11日 (金) 14時35分
批判されてから、謝罪に行った女子学生より、こことは違いますが、同じく世界遺産に落書きしてしまった、男子学生もいたんですよ。
謝罪した上に自腹で落書き消しに行きましたが。
老人の世代というのは、何か
勘違いしてる人多いな。
投稿: | 2008年8月11日 (月) 21時20分