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2008年7月 9日 (水)

「世界遺産」登録数は限界に近い

「観光」で食べている人たちが「世界遺産」というブランドを欲しがることは分からないでもない。石見銀山は昨年指定されたとたん、以前の30倍の観光客がつめかけたという。

ブランド好きは世界共通だ。個性の時代といわれて久しいが、むしろ情報化が進むほど、独自の文化的尺度を持った人が少なくなっているように感じる。選択肢が多すぎて、権威のお墨付きなしには手を出せないのだ。

「平泉」はそのお墨付きが得られず、世界遺産への登録が見送られた。「石見銀山」の価値より、劣っているとは思えない。有名な中尊寺の金色堂はもとより、復元された浄土庭園の景観には、京都や奈良にも見られない趣がある。

しかし、「人類の普遍的価値」として、浄土思想とそれにもとづく美意識を、世界の人々に理解してもらうのは至難のワザだったのかもしれない。

京都、奈良の寺院や庭園に比べ、どこがどう違い、しかもそれに匹敵する価値があることを、英文できちんと分かりやすく説明できたかどうか疑問でもある。新渡戸稲造の「武士道」や鈴木大拙の「禅」は著者本人が見事な英文で書いたからこそ、世界のベストセラーになった。

一方で、世界遺産を審議する側の立場も考える必要がある。すでに、世界遺産として851件もが登録されている。登録数の上限は設けられていないとはいえ、このまま増え続けると、「世界遺産」の希少価値が下がってしまう。せいぜい1000件が妥当なところだろう。

審査がこれまで以上に慎重であるのは仕方がないことだ。既登録の世界遺産と似たようなものは除外されるに違いない。

日本にはまだ、「彦根城」「鎌倉の寺社」「富士山」「富岡製糸場・絹産業」「飛鳥・藤原の宮」「長崎教会群」などが推薦リストに入って順番待ちをしている。

「平泉」の登録に期待していた方には気の毒だが、これで「平泉」の価値がいささかも下がるわけではない。

浄土思想の起源はインドにあり、中国を経て日本に伝わったが、法然、親鸞、一遍という大思想家を輩出した日本にこそしっかりと根付いたものである。日本人がそれを理解し、「平泉」の価値を再発見するきっかけとなればいいのではないか。

ところで、「世界遺産登録」を観光振興の手段と見るのはあるていど仕方ないとしても、度が過ぎると、登録運動はきわめて胡散臭いものとなる。観光業でいくら儲かるかということと、歴史的遺産の文化的価値は、全く別次元の問題であるからだ。

日本の場合、文化庁、環境省、林野庁などの関係省庁連絡会議で推薦物件が決定され、暫定リストとして、外務省を通じユネスコに提出される。

このリストの中からユネスコに登録申請をおこなう過程で、観光業者や地方自治体の陳情を受けた国会議員らが介入し、地元有利の優先順位をつけさせるということもありうるだろう。

本来、文化・自然遺産そのものが持つ価値を、地域にかかわりなく正当に評価しなければならないが、あるレベル以上のものになると、その価値判断の基準は担当者個人の主観、つまり趣味、嗜好のたぐいに委ねるほかない側面もある。

政治的利権が付け入るスキがあるとすれば、多分そんなところだ。

いずれにせよ個人的には、もうそろそろ「世界遺産」ブランド獲得に精力を費やすのをやめたらどうかと思う。あちこち「世界遺産」だらけにしないでほしい。

「人に知られたくない日本遺産」というのを指定してくれたら、へそ曲がりの筆者などは多分、のこのこと出かけていくだろう。

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