福田援軍を自任する加藤紘一「金正日礼賛」発言の波紋
霧の洞爺湖で、福田首相は河野雅治外務審議官に電話をかけ、言葉のパズルに、苦心惨憺していたようだ。
そうして出来上がったのが、参加首脳みんなが合意できる文面だが、理解困難な文章の謎解きをやらされる一般人はたまったもんじゃない。
サルコジにソデにされ、ブッシュには「プライムミニスター」と呼ばれるだけ。ブッシュの頭の中にある日本の首相はいつまでも「コイズミ」らしい。
世界の政治課題がとりあげられるなかで、チベットや北方領土は少しも出てこない。やたらと目立ったのが、首脳たちが笑顔をふりまいた記念撮影であり、目立たなかったのが福田議長のリーダーシップだった。
この間、一人の政治家が、BS11の対談番組で福田首相の外交手腕を絶賛していた。加藤紘一である。対談相手のお笑いタレントに語ったことを、再現してみよう。
「盧泰愚(盧武鉉と間違えている)ね、そう李明博の前の韓国の大統領、彼が政権の最後に平壌に金正日に会いにいくとき、福田さん電話してるんですよ」と、加藤の福田評がはじまった。
「金正日によろしくって言っといて、とね。そしたら、盧武鉉が帰ってきて福田さんに、言っといたよ、という対話を電話でやってるんですね。そういうチャンネルを福田さんは持ってるんですよ」
拉致被害者のご家族の心情が思いやられる。元外務官僚の「ホンモノの外交とはこんなもんです」という傲慢な部分が出ているのだが、本人はそれに気づくデリカシーがない。
さて、問題はここからである。平成14年秋の小泉訪朝後、官房長官だった福田が「いったん拉致被害者を北朝鮮に返すべきだ」と主張したことに話が及んだ。
加藤は「福田さんが正しい。国家と国家の約束だから」と言い出した。話の方向は安倍批判へと向かった。安倍は加藤の盟友、山崎拓を「百害あって利権あり」とこき下ろしている。
「安倍さんらが返すべきでないと言い、返さなかったのが日朝問題を打開できない理由だ。一度返して、また来てくださいと言ったら、何度も何度も交流していたと思う」
そして「返したら殺されるという考えがあった。そこは外交感覚の差ですね」と、安倍外交の稚拙さを強調した。
この対談の中で、筆者が加藤という人物に脅威をおぼえた以下のような発言があった。
「小泉さんが平壌に行ったから、天皇みたいな地位の人が“拉致は親の代のことだけど、ごめんなさい”と謝った」
小泉訪朝の成果は別として、この加藤の言葉に明らかに“金正日礼賛”ともとれるニュアンスを感じないだろうか。
「天皇のような立場の人が、本来謝る必要のない件で、謝った。小泉首相がわざわざ来たから、それに応えた。金正日は誠実な人なのだ」。そう彼は言いたいとしか思えない。
「拉致被害者家族会」と「救う会」が「加藤氏に強い憤りを覚える」と抗議声明を出したのは、当然のことだろう。
抗議文は、加藤の見解に、以下のように反論している。
「5人が北に戻されていれば、“自分の意思で戻った”と言わされたあげく、“拉致問題は解決済み”という北朝鮮側の主張に利用されたであろう。その上、5人はこれまで以上に不自由な監視下に置かれたであろうことは、少しでも外交感覚のある人には明らかである」
加藤のように金正日を信頼する人物に、拉致被害者と家族の考えは届かないかもしれない。
(敬称略)


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