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2008年8月19日 (火)

経済利権集団の軍に見放され、パキスタン大統領辞任

ついにパキスタンのムシャラフ大統領が辞意を表明した。

パキスタンの実権を握る軍に見放されたムシャラフには、ほかに選択肢がなかった。親米とされてきたムシャラフ政権の崩壊を米国が静観していることは、ムシャラフの腹心だったキアニ陸軍参謀長を、米国がすでに親米後継者として取り込んでいることをうかがわせる。

米国はおそらく、3月に発足した反大統領派の4つの政党による連立政権をあてにしていないだろう。なぜなら、パキスタンは圧倒的に軍の力が強い国であるからだ。

これまで、政党の政権が誕生しても、汚職や不正蓄財が暴露され、クーデターで軍事政権に移行する。その繰り返しだった。しかも、現在連立を組む第1党の人民党と第2党のイスラム教徒連盟シャリフ派はもともと政敵であり、政権の継続性に疑問がある。

さらに困ったことに、パキスタンの経済界は軍事政権を好ましいと考えている。実質的に、軍は「パキスタン最大の政党」といえる存在であり、大資本と結託した利権集団なのだ。上級将校はムシャラフのおかげで国家の富を吸い上げ、経済界の大物ともなっている。だからこそ、軍幹部はムシャラフに忠誠を誓ってきた。

しかし、ムシャラフ大統領の弾劾を求めるうねりは、軍に対する国民の支持率を押し下げ、軍内部に危機感が充満しつつあった。

朝日新聞によると、今月7日、首都イスラマバード近郊の陸軍総司令部に、キアニ陸軍参謀長が11人の軍団長を集めて話し合い、ムシャラフに対する「中立と静観」を決めたという。つまり、ムシャラフ支援を打ち切ったということである。

この決定を伝え聞いて、ムシャラフは退陣の決断をすべき時期が近づいていることを悟ったに違いない。

ライス国務長官はムシャラフ辞任の報を受けて「ムシャラフ氏は米国の友人で、世界で最も熱心にテロとの戦いに取り組んだパートナーの一人だ」と持ち上げたが、想定内のことだから余裕の発言が出てくるのだろう。

米国では議会を中心に、タリバンやアルカイーダなどイスラム過激派対策に関してムシャラフの手ぬるさを批判する声が強く、「アナザーパーソン」待望論が根強く存在した。

政治経済に実権を握り、対テロ作戦の最前線に立つパキスタン軍への影響力をポスト・ムシャラフでも保持できると米国は読み、そのために軍幹部への工作を進めていたと思われるが、不安がないわけではない。

イスラム原理主義勢力の影響が陸軍内部にもかなり浸透しているからである。利権にあずからない下級将校らが、クーデターの動きを起こさないとも限らない。

万が一、イスラム過激派とつながる勢力が軍の実権を握り、カーン博士の核闇市場を支配すれば、世界にさらなる恐怖をまきちらすことになる。

イラン、北朝鮮、リビアに秘密裏に核開発技術を供与していた事実を認めて以来、カーン博士は事実上、自宅軟禁状態だが、そのネットワークは地下に潜って存続しているという疑惑があるのだ。

しかし、軍幹部は米国の支援のもとに不満分子を抑え込み、強大な経済利権を死守するハラだろう。パキスタン人軍事アナリスト、アイシャ・シディカは次のように指摘する。

「軍の資本は、合法的な経済活動に加え、非合法分野にも、直接的・間接的に投じられている。他のいかなる国家機関にもまして、国富を吸い上げているのが軍なのだ。こうした権力によって、軍は他の政治勢力に対して明らかに優位に立ち、他の事業者に対する立場を強めている」

だが、20%をこえるインフレで経済がぐらつくなか、国民の不満は膨らむ一方だ。軍だけが暴利をむさぼっていては、それこそこの国は救われない。

対テロ作戦のためにパキスタン人民を犠牲にすることは許されない。軍政から国民を解放し、民主的な政府をつくるようにバックアップするのが米国など先進国の本来のつとめであろう。

                    (敬称略)

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