« 壮麗な「北京五輪絵巻」で逃した、もう一つの「感動劇」 | トップページ | ギョーザ事件で中国の面子を守る日本政府 »

2008年8月10日 (日)

米ロ石油対立のグルジア、ロシア軍事介入で危機深刻化

ブッシュ、プーチン、サルコジら世界の首脳が北京に集まっているころ、旧ソ連のグルジアで続いていた紛争は重大な局面に突入した。ロシア軍とグルジア軍が激しい戦闘をはじめたのだ。

いま、グルジアで起きていることは実質的には、米ロの戦いといえよう。グルジアのサーカシビリ大統領は、アメリカの後押しで実現した完全な傀儡政権だ。そこから分離独立をめざす南オセチア自治州を支援してきたロシアが軍事介入し、戦火はさらに拡大する気配をみせている。

南オセチア自治州の独立を認めない米国と、グルジアのNATO加盟に反対するロシア。五輪開会式会場で、プーチンから「南オセチアで戦争がはじまった」と聞かされたブッシュは「戦争はいけない」と顔をしかめたという。

両者の対立の背景は、端的に言うと石油利権だ。グルジアとともに旧ソ連の親米国家であるアゼルバイジャンは豊富なカスピ海石油の産地、バクー油田をかかえている。

石油業界がバックにひかえるブッシュ大統領はバクーからグルジアの首都トビリシを経て、トルコ南部ジェイハンに原油を輸送する巨大パイプライン計画を推進した。

ロシアを経由しないということがこのプロジェクトのポイントである。かつてロシアの石油最大手だった「ユコス」をめぐるプーチンの策動にブッシュ政権が怒り、ロシアにおける石油戦略を転換した。

「ユコス」は、ユダヤ系実業家、ホドロコフスキーが95年に政府から買い取ってロシアのナンバーワン企業に育てた。この会社にエクソン・モービルとシェブロン・テキサコが目をつけ、買収交渉を進めたが、プーチン政権は巨額脱税の容疑でホドロコフスキーを逮捕し、ユコス株を差し押さえて国営企業ロスネフチに吸収させた。

どうしてもカスピ海原油を確保したいブッシュは、かつてクリントンがアゼルバイジャン大統領に提案し、一度は立ち消えになったグルジア経由パイプライン計画を復活させたのである。

このパイプラインは、英BPなど11社で構成する国際企業連合が建設し、06年6月から稼動を始めた。カスピ海原油はそれまでロシア国内を通り、黒海からトルコのボスポラス海峡経由で運ばれていたが、このパイプライン完成で国際市場への直送が可能となった。

米国を中心としたパイプライン建設の動きに、ロシアはグルジア国内に紛争をつくり出す工作で妨害を続けた。オセチア人が多く住む南オセチア自治州にロシア平和維持軍を駐留させて自治州政府の後ろ盾となり、分離独立をめざす動きを後押しした。

そのうえ、ロシアはグルジアへのガス、電気の供給を制限して経済面での揺さぶりをかけた。03年11月、当時のシュワルナゼ大統領は親米路線だったが、これにより態度がぐらつきはじめたことから、米国は野党勢力を支援、傀儡政権をつくることに成功した。

こうした、米ロの思惑によるグルジア国内の対立構造が、今回の事態を招いたといえる。欧州連合(EU)はロシア、グルジアの外相と連絡を取り、事態沈静化の道筋を探っているが、問題の根は深い。

グルジアでは南オセチア自治州とともにアブハジア自治共和国も独立承認を国際社会に求めており、米ロの勢力圏争いは石油利権と絡んで難しい局面を迎えている。

この記事を投稿する直前、そのアブハジアで、ロシア空軍機がグルジア実効支配地域を空爆したというニュースが飛び込んできた。

ライス米国務長官はロシアに対し「攻撃を中止し、戦闘部隊を撤退させることを求める」との声明を発表した。今後、米国がどう対応してくるのか、しばらくこの地域から目が離せない。

                    (敬称略)

Blogbanner2人気ブログランキングへ

« 壮麗な「北京五輪絵巻」で逃した、もう一つの「感動劇」 | トップページ | ギョーザ事件で中国の面子を守る日本政府 »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

グルジアとロシアってあまり注目していなかったので、何がどうなってるの?状態でした。
パパさんの説明で少しわかりました。
ありがとうございます。

>五輪開会式会場で、プーチンから「南オセチアで戦争がはじまった」と聞かされたブッシュは「戦争はいけない」と顔をしかめたという。

私がプーチンだったら、「アンタにだけは、言われたくない」って啖呵をきっていた。
ブッシュって本当にぃーー。臆面もないとはこのことですね。


コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/335692/22894006

この記事へのトラックバック一覧です: 米ロ石油対立のグルジア、ロシア軍事介入で危機深刻化:

» 南オセチアのグルジア軍侵攻とロシア軍介入! [ちょっと右寄りな時事ニュース!]
☆いつから僕達日本人は日本を好きになることを忘れたんだろう?戦争に負けたぐらいで自国を嫌いになるなんておかしいです!日本には... [続きを読む]

» 私書箱 [激安!池袋の私書箱新規オープンです]
池袋の私書箱の紹介です [続きを読む]

» グルジア・オセチア戦争 [徒然の陣(仮題)]
 直近の8月8日未明、グルジアが、分離独立を目指す同国北部地方の南オセチア自治州への軍事攻撃を開始した。 グルジアからの分離独立を目指すアブハジアとこの南オセチアを陰に陽に支援し、治安維持軍と称す部隊を駐留させているロシア軍が介入反撃、既に戦争状態にある。  地理的には北にロシア、西に黒海〜東欧、東にアゼルバイジャン〜カスピ海、南方にトルコやアルメニアから、シリア、イラク、イラン等が見える西アジア。ロシア、東欧、中央アジアに、中東も、何れも目と鼻の先だ。更に付け加えると、ロシアにおける独立と... [続きを読む]

« 壮麗な「北京五輪絵巻」で逃した、もう一つの「感動劇」 | トップページ | ギョーザ事件で中国の面子を守る日本政府 »

フォト

1日1回応援クリックお願いします↓

過去の全ての記事

2016年6月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

microad

無料ブログはココログ