恐慌回避へ風雲急、モルガン救済の三菱UFJは1兆円増資か
9月24日の当ブログで、三菱UFJがモルガン・スタンレーへ9000億円の巨額出資をすることに疑問を呈した。
三菱UFJは、アメリカの会計基準だと、保有株などの含み益の減少により、ことしの3月決算時点で5424億円の赤字に転落していた。
9月24日の日経平均株価は12,031円。アメリカの金融危機が日本の株価に波及し、ここからさらに下落することは目に見えていたはずだ。
案の定、株価は10月24日、わずか1か月で7,649円まで下落、三菱UFJは保有株の時価が下がって深い痛手を負った。
26日の日経新聞によると、モルガンへの出資と株価下落による自己資本の目減りを補うため、三菱UFJは今年度中に最大1兆円規模の増資を検討しているという。
結局、モルガンの救済に動いたわずか1ヵ月後には、自らへの救済を世界の投資家や金融機関に呼びかける状況に陥る始末だ。金融のプロ集団が、専門化しすぎて大局観を失っている証拠である。
利害がからむと、どんなに優秀な人間でも厳しい見方を忘れ、自分に甘い判断をする傾向がある。欲は迷いを生み、迷いの中では真実は見えない。
こういうときは無関係なシロウトの直感のほうが正確なものだ。
さて、日経平均7000円割れが目前に迫ってきた。麻生首相は北京で「株価に一喜一憂しているわけではない」と相変わらずの麻生節を披露したが、本音を漏らした以下の部分はテレビでは流れてなかったように思う。
「過去に例がない話が起きているから、あまり経験則を語っても意味がないと思うが…」
そこが問題なのである。見たこともない“エイリアン”が金融市場を破壊しているのだ。金融政策のマエストロといわれたFRB前議長グリーンスパンは「1世紀に一度の津波」といい、自分の予想をはるかにこえた事態にたじろいでいる。
津波のもとは楽天的で平穏なアメリカの家庭生活だった。
貯蓄など頭の片隅にもなかったアメリカ人は、クレジットカードのリボルビング払いで家や車や家電を買いまくった。いつまでもこの楽しい生活が続くと思っていた。
ところがローン残高を膨らませたあげく、ある日突然、スーパーのレジで「このカードは使えません」と言われ、愕然とする。住宅バブルは崩壊し、クレジットカード破産が増え続ける。
いまになって米国人は教会で「清貧」の精神を学び、貯蓄の大切さを自身に言い聞かせているという。
過度な繁栄こそ危機への序章であることは経済も、人生も同じだ。
1928年12月。この年もアメリカは「未曾有の繁栄が続いている」とクーリッジ大統領が一般教書演説をし、国民は幸せな年末を過ごした。
翌1929年、株や不動産への投機熱がピークに達したとき、ようやく人々は「行き過ぎ」に気づくことになる。
10月24日、「暗黒の木曜日」と呼ばれる株暴落の第一波に襲われ、世界恐慌へのメルトダウンがはじまった。
1932年、株価が底をうってアナリストが「経済は回復しつつある」と解説し始めた。ところが皮肉なことにそれがパニックのイントロとなった。ネバダ州の州立銀行に預金引き出しの人波が押し寄せたのだ。
これに端を発した預金引き出しの取り付け騒ぎが全土に広がり、その翌年、就任直後のルーズベルト大統領は「米国の全ての銀行を閉鎖する」と宣言した。
人は欲望と恐怖のバランスがうまく取れているうちは冷静に判断できる。欲にかられて熱狂しているときと、不安と恐怖にさいなまれているときには正常な判断ができない。
これから邦銀も生保も厳しい経営を迫られる。急激な円高は輸出企業を奈落の底に突き落とすかもしれない。そのときに事実を直視し客観的な判断ができれば生き残ることができる。ゆめゆめ、物分りの悪い上司に意見を合わせたり、都合の良い論理にすり替えたりしないことだ。
GDP500兆円をこえるこの国の経済を浮揚させるのに、数兆円の財政出動でどうなるものでもない。さりとて、巨額負債をかかえる国家に「骨太の方針」を転換させて、大規模な支出をともなう“日本版ニューディール政策”を期待するのも考えものだ。
政府はとりあえず株価の緊急対策として、銀行保有株式の買取りを日銀に要請することになったが、この効果のほども甚だ疑問である。しかし、「経験則が通用しない」とわかっていても、選挙を前に「無策」というわけにいかないのが麻生首相の立場だろう。
ところで、25日のテレ朝「サンデープロジェクト」で、麻生首相の打ち出した景気対策に関する、自民党の菅義偉と公明党の高木陽介の解釈の違いが浮き彫りになった。
「道路財源を一般化し1兆円を地方に」という文言に関し、菅義偉は「現在地方にまわしている7000億円に1兆円をプラスする」という解釈を披露。これに対して高木陽介は「7000億円プラス3000億円で、合計1兆円」と反論した。
連立与党内のこの食い違いは、麻生首相の「お友だち」を中心としたグループと「公明党」が同床異夢であることを物語っている。
解散時期の問題にしても、先送り論の麻生側近と、早期解散を求める公明党や自民党の多くの議員との間で、バラバラの発言が繰り返されている。
こういう連立政権において、迅速で効果的な政策が打っていけるのだろうか。解散を来年に先送りすれば、野党の反発で新年度予算を審議する通常国会の運営もままならず、内閣支持率は落ち続け、それこそ最悪期の解散となることも覚悟せねばならない。
麻生首相は26日、オタクの聖地・秋葉原で街頭演説し、熱烈な声援を受けて、人気に更なる自信を深めたことだろう。新聞は麻生側近の解散先送り論に惑わされ、10月末解散説を取り下げつつある。
ならば、人に指図されるのを嫌う麻生首相にとって、むしろ「10月末解散」を決断しやすくなったと考えるのだが。 (敬称略)
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>そのときに事実を直視し客観的な判断ができれば生き残ることができる。ゆめゆめ、物分りの悪い上司に意見を合わせたり、都合の良い論理にすり替えたりしないことだ。
時代の荒波の中で自分の置かれた状況を知ることさえ難しいと感じます。まして的確な判断を下すのは至難ですが、それが生き残るために必要というお考えはまさにその通りだと思います。
投稿: ウインピー | 2008年10月27日 (月) 19時53分